YOMIURI ONLINE
現在位置は
です

教育ルネサンス

一覧
本文です
教育県 検証

(6) 「ペア学習」気遣いも向上

写真の拡大
向かい合って考えを伝え合う作道小学校のペア学習

 生活面の指導を兼ねた学力向上策に、富山県が取り組む。

 「それではペア学習を始めます」。教師のかけ声で隣同士の児童が向き合い、まず「よろしくお願いします」とあいさつした。

 射水(いみず)市立作道(つくりみち)小学校3年生の国語の授業で、教室中に、考えを説明し合う児童の声が響いた。教科書の中の物語から、主人公のいる場所や気持ちなどの描写をしている部分を読み取る。

 「ペア学習」は今年度から国語と算数を中心に全学年で取り組まれている。国語では主に読解、算数では、文章題を解く際、どの計算式が一番簡単でわかりやすいか、お互いに話し合わせたりする。相手に説明することで、自分の考えを明確にし、相手の考えと比較することで、学習に深みを持たせる。ただ発表し合うのではなく、自分の考えをノートにまとめてから相手に伝え、互いの考えの比較もノートにまとめる。

 これを1年間近く続けてきて、書く力が向上しただけでなく、人前での発表が苦手だった子が自信をもって発表できるようになったり、授業に集中できなかった子の態度が向上したり、といった成果が出た。高安和代子校長(56)は「お互いに認め合うことで人間関係作りにも役立っている。クラスの雰囲気がとても良くなった」と目を細める。

 富山県教委は今年度から、小中学校で「とやま型学力向上プログラム」事業を始めている。

 柱は、「学び合い」を通して学力と人間関係をはぐくむことと、体験学習を通じて活用する力を伸ばすことの二つだ。作道小のペア学習など、児童生徒が相互に教え合う「学び合い」の学習活動は、DVDに収録し、全小中学校288校に配布する。

 富山県の学力対策には多彩なメニューが並ぶ。富山大人間発達科学部の学生を県内の小学校50校に配置する「学びのアシスト推進事業」、教師OBらが現職教師に授業方法を伝授する「授業力向上アドバイザー事業」、理科が得意な大学生などが小学校の理科授業の実験や観察をサポートする「理科支援員配置事業」などだ。

 昨年の全国学力テストでは、小中学校とも正答率は全国トップクラス。小学生の家庭学習時間が全国平均を下回り、テレビゲーム・インターネットの使用時間が全国平均を上回るといった結果も、テストと一緒に行われた学習状況調査で出たが、学校現場での取り組みの充実ぶりがこれをはね返した格好だ。

 県知事が主催する「明日のとやま教育創造懇話会」では、学力向上策を巡る議論の中で、「全国レベルでこんなに良い成績をとっているなら、何もこれ以上やることはないのではないか」といった意見さえ飛び出した。そんな富山県が「学び合い」を新たな柱に位置づける背景には、生徒指導上の問題がある。2006年のいじめの認知件数や不登校の割合が初めて全国平均を上回った。そうした中で、学力向上との一石二鳥の「学び合い」にかける期待は大きい。(宮本清史、写真も)

 いじめと不登校 富山県の小中高および特別支援学校のいじめの認知件数は06年度で1477件で、1000人当たり12・1件(全国平均は8・7件)だった。また、不登校の児童生徒数は小中高校で計1373人。在籍者数に対する割合で、小学校が0・38%と全国平均0・33%を上回った。ただ、いじめは定義や集計方法が06年度から変わり、都道府県で大きな差が出ている。

2008年2月20日  読売新聞)
現在位置は
です