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シニアの学び

(11)資産管理で確かな備え

保険について解説する田中さん。金融関係の講座が中高年男性に人気だ(京都市のラボール学園で)

 長寿社会を生き抜くには、金融の知識も必要だ。

 「生命保険には、どんな種類がありますか?」。京都市の市民向けの学習施設「ラボール学園」の一室。資産管理のプロであるFP(ファイナンシャル・プランナー)の1級技能士田中孝昌(たかよし)さん(50)が、中高年の受講生に質問を投げかける。

 「定期保険」「終身保険」「がん保険」……。様々な声があがる。だが、同じ定期保険でも、保険料の支払い方や金額で、パターンは色々だ。「保険には約800種類ありますが、基本を理解しておけば難しくありません。目的を決め、必要な期間と金額を決めれば、保険は絞れてきます」。田中さんの解説に、受講生はメモを取りながら熱心に耳を傾ける。

 中高年向けに月2回、午後6時半から2時間開かれる「定年力検定対応講座」。講師はFPや社会保険労務士、税理士など、テーマで変わる。定年退職後の税金対策や、資産運用の方法、不動産売買の手続き、保険や年金の基礎知識などを幅広く解説する。

 日本定年力検定協会が主催する検定は、昨春の第2回から、全国各地で開かれるようになった。検定は、退職後に必要な金融関係の基礎知識を問う問題だ。資産運用などに興味を持つ中高年を中心に関心が高まる。

 田中さんは「会社に勤めていた間は、保険や貯金の管理は奥さん任せにしていて、お金の基礎知識が少ない定年間際の男性が多い」と指摘する。「金融商品に本来、いい悪いはない。自分の生活設計に合う商品を選択するには、自分の退職金や年金などの資産を把握し、運用する目的を整理し、商品を選ぶ時の判断力を養うことが必要です」

 こうした講座には金融機関が主催のものもあり、金融商品の説明とセットの場合が多い。「年金への不安もあり、金融や資産運用の関心は高い。最初にリスクなどをひと通り理解しておこうとする、熱心な中高年の男性が増えてきているようだ」と担当者。

 年間約50講座が開かれ3000人が学ぶラボール学園でも、ここ数年、50〜60代の男性受講者が目立ち始めた。夜の株式や金融知識の講座には定年間近の現役も目に付く。

 「定年力検定対応講座」の受講者の一人、京都市の小田原道夫さん(60)は、勤務している会社から退職後の生活設計を考えるように言われた。

 退職金を貯金しようとしても、金利は低く、年金がどのくらい支給されるか、一抹の不安もあり、受講を決めた。小田原さんは昨年11月に行われた第3回の検定で合格したが、その後も受講を続ける。「講座は、年金の申請の仕方から貯金のバランスの良い分散の仕方まで、実生活で役立っている。定年後は野菜作りや、世界遺産の旅行をしてみたい。そのために必要なお金をどう管理するか、じっくり考えたい」

 資産管理は、生きがいのあるシニア生活を過ごすための出発点でもある。(宮崎敦、写真も)

 定年力検定 2006年に鹿児島県で始まった。現在はNPO法人日本定年力検定協会(事務局・神戸)が年1、2回実施している。年金、保険、資産運用など6科目計120問を2時間で解き、全科目で50点以上(満点は100点)、平均70点以上が合格。昨年11月の第3回検定は18都道府県21会場で計215人が受検、175人が合格した。第4回は今年8月30日。検定料は3000円。

2008年4月22日  読売新聞)
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