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教育ルネサンス

奉仕とボランティア(4)

古里・山形支える高校生

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新年度の活動予定を話し合う「高校生の部屋」のメンバー。町教委担当者の長倉さん(右端)が立ち会うなど、行政との密接さが山形県の特徴だ

 公共施設を拠点にした高校生ボランティアの活発な地域がある。

 木造の郵便局舎を改装した町の集会施設で、7人の高校生が新年度の活動内容を考えていた。「町内探索のイベントを開きたい」「『いがらモチ』(名物の和菓子)を全国的に有名にするのはどうかな」

 7人は山形県最上地方にある金山町のボランティア団体「高校生の部屋」のメンバーだ。地元に住み、県立金山高校に通う十数人が、高齢者施設で入所者の話し相手になったり、独り暮らしのお年寄りに年賀状を書いたりしている。

 グループ名は当初、公民館の一室が活動拠点だったことが由来。放課後に小学生と遊んだり、コンサートを開いたりするグループとして約30年前に誕生した。

 最近では、町の行事の担い手として重みが増している。スキー大会やマラソン大会では時間計測や走者に飲料を配る役を務め、育児世代の交流会では子供の遊び相手になった。

 町の人口は約7000人。住民はかつて、10代後半から「若連」「青年団」といった組織に属し、地域の行事を担っていたが、住民の高齢化や町外で働く人が増え、そんな組織もなくなった。

 それだけに、町にとって高校生ボランティアは、現代版の青年団のような存在だ。「高校生の部屋」副代表の栗田紋花(あやか)さん(17)は「自分たちが地域を支えているとは、あまり思いません。色々な人と交流したり、感謝されたりするのが楽しい」と屈託がない。だが、町のボランティア担当を務める町教育委員会教学課主任の長倉章さん(39)は「活動を通して、次は自分が地域を担う意識をもってほしい」と期待する。

 山形県には、高校生を中心としたボランティアが92団体(約1500人)あり、地域の祭りを手伝ったり、高齢者宅の雪下ろしをしたりしている。全市町村に少なくとも1団体あって、原則として学校単位ではなく、公民館などで地域単位で活動しているのが特徴だ。

 起源には諸説あるが、市町村や公民館の担当者が高校生に働きかけるなどして、30年ほど前から県内各地に相次いで誕生したという。こうした経緯もあって、教育委員会や公民館など公的機関が事務局となっている団体が多い。

 山形県教育委員会は、こうした取り組みを「やまがたヤングボランティア(YYボランティア)」と名付け、十数年前から毎年、団体の交流会や、市町村の担当者向けの研修会を開くといった支援をしている。

 県教委教育やまがた振興課・社会教育主査の白林和夫さん(43)は「ボランティアは、人とかかわる力や、それをもとに社会を良くする力を育てるもの。山形で活発なのは、研修などを通じ、そんな見方を県と市町村や公民館の担当者が共有しているからでしょう」と話す。

 全国的に見ても、青年団員数は約20万人(日本青年団協議会)と、昭和20年代の20分の1だ。そうした中で、YYボランティアは近年、中学生や大学生、青年のグループも誕生した。すそ野は着実に広がっている。(木田滋夫、写真も)

 公民館と青少年 文部科学省が3年ごとに実施している「社会教育調査」によると、2005年度の公民館数は全国に1万7143か所。04年度の利用団体数はのべ497万3659件だった。成人団体と高齢者団体の利用で半分を占め、青少年団体の利用は6.2%にとどまっている。

(2007年4月20日  読売新聞)

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