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教育ルネサンス

教育県 検証(3)

学力「平均以下」の衝撃

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吉備中央町立津賀小で開かれた学力向上モデル校の検討会。小1国語の教材研究を巡って現場の教師と大学の研究者らが真剣な討議を繰り広げた

 学力テストの結果は教育県に大きな影響を及ぼした。

 「大変残念だ。教育や文化を重んじ、人材育成に熱心だった教育県岡山の危機と言えるのではないか」

 昨年12月の県議会代表質問。43年ぶりに行われた全国学力テストの結果を受けて、自民党県議が詰め寄ると、石井正弘知事も「厳粛に受け止めている」と答弁せざるを得なかった。

 小学6年生も中学3年生も、おおむね全国平均を下回る岡山県の成績に、県内のある高校長は「教育県の看板を下ろさないといけないかもしれない」と肩を落とした。

 県教委の動きは早かった。結果公表から約1か月後の11月下旬には、県内の全公立小中学校に授業改善プランをまとめるよう指示した。学力テストの結果を分析し、課題や改善策を報告させたのだ。期限は12月いっぱい。改善策は今年度中にできることと次年度以降のことを分けて回答させる徹底ぶりだった。

 12月には学力向上のモデル校として県内の小中学校3校を指定した。各校とも、1月から3月初旬までの間に3〜5回の検討会を開いて、模擬授業や教材研究に取り組んでいる。

 1月24日、吉備中央町立津賀小学校で行われた検討会では、大学の専門家も交え、小学1年生の国語で「物語をどう読ませ、考えを語らせるか」について話し合われた。

 他の2校のテーマも、論理的な思考力や言葉で表現する力の育成でいずれも考える力を重視する経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)を意識したものだ。こうした力は、全国学力テストでも問われている。

 研究の経緯は、2月末から3月初旬に開催される公開授業の内容と合わせてDVDに収録し、全校に配布して授業改善に役立てる。

 岡山県には、教育県としての下地がある。

 2006年の人口10万人あたりの大学・短大数が全国6位。各大学には中国・四国地方一円から学生が集まる。旧制第六高等学校以来の伝統と言えよう。

 財政難を乗り越えて04年に完成した県立図書館の来館者数や個人の貸出数は日本一を誇る。利用者が予約すれば、県内全域の公立図書館や半数近くの高校図書館にも配本されるシステムを導入。児童書のスペースを大きく確保している。市町村レベルでも、岡山市が全校に専任の学校司書を配置するなど、熱心な取り組みが各地でなされている。

 だが、岡山県PTA連合会が06年秋、保護者に行った調査では、小学5年生と中学2年生の読書と音楽鑑賞の1日の合計時間が「しない」「30分未満」の合計が63・1%にのぼった。県民の読書熱の高さが、子供たちには素直に受け継がれていない状況にあるようだ。

 県教委は学力向上策の一環として、子供の読書活動の強化にも乗り出す方針だが、効果を生むには長い目で見る必要があるだろう。(宮本清史、写真も)

 全国学力テスト 小学6年と中学3年の計233万人が昨年4月、国語と算数・数学で、知識を問う「A問題」と活用力を問う「B問題」に挑んだ。岡山県は小中八つのテストのうち、中学国語Aで全国平均の正答率をわずかに上回り、数学Aで全国平均と同率だったほかは、全国平均を下回った。小6算数Aは41位、中3国語Bは38位。全国的には秋田、福井、富山などが上位だった。

(2008年2月15日  読売新聞)

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