死後にマイミク日記が更新された?
筆者が見た驚愕の事実とは
筆者はソーシャル・ネットワーキング・サービス「mixi」を愛用しているのだが、筆者のmixi内の友人に、とてもHな日記を公開している人妻さんがいらっしゃる。日記につづられている内容は、人妻さんの空想だったりリアル体験だったりするのだが、とにかく内容が刺激的なので、男性ファンの数は軽く100名を越えている。
先日、彼女のある書き込みを目にしたことから、筆者は思わぬ「恐怖体験」をしてしまった。その書き込みとは、「マイミクのチョコさん(仮名)が亡くなりました」というものである。ちなみに「マイミク」とは、mixi内の友人のことを指す。彼女の日記によると「チョコさん(仮名)」は、出張先で急性の心筋梗塞で他界されたという。どうやら人妻さんとチョコさんは、H話で盛り上がる友人どうしだったようである。
こういう書き込みを見ると、やはりやじ馬根性がわき起こる。筆者は、ちょいとチョコさんの日記を拝見しに行ってみた。筆者の恐怖体験はここから始まった。
チョコさんはちょうど3日ほど前に亡くなっていたのだが、筆者が訪れると、何と彼の日記が更新されていた。更新したのはチョコさんの奥さんである。奥さんは通夜の日、そして告別式の日の2回にわたって、「チョコの配偶者です」というタイトルで日記の書き込みをしていた。内容をすべて引用するわけにはいかないので、ここでは箇条書きでまとめておこう。
■わたしは「チョコ」ではありません。妻です。
■夫は先日、心筋梗塞で他界しました。
■夫のPCを開いてみたらmixiにアクセスできました。
■まさか、こんな破廉恥な日記を書いているとは知りませんでした。
■かなりショックでありますが、このままmixiのIDは放置しておくのが私の復讐になると思います。
奥さんの書き込みによると、事の真相は次のようなものだった。奥さんが、通夜の前にご主人のノートブックPCを開いてみたところ、IEのお気に入りにmixiが登録されていたという。試しにアクセスしてみると、mixiにあっさりとログインできてしまったそうだ。自分専用のノートブックPCであったため、生前のチョコさんは、Windows本体もIEも、IDやパスワードなどの入力を省略していた。そして奥さんが目にしたのは、目を疑うばかりの破廉恥な日記だったというわけだ。
mixiは、ある程度の匿名性を保てるため、変態じみた嗜好を強烈に顕示する人々もいる。そして旦那さんは、この「変態じみた嗜好の持ち主」だったのである。
奥さんにしてみれば、寝耳に水どころか、天地がひっくり返るほどの強烈な事件だったに違いない。mixiの友人のアイコンはほとんどが女性で、しかも彼女たちの日記にはSEXの話が赤裸々につづられている。それに対するチョコさんのコメントも、ふだんからは想像もつかないような過激なものである。一家の大黒柱を失い、ただでさえ意気消沈しているところに、そのような旦那さんの意外な一面を見せつけられ、奥さんは精神的にかなり参ってしまったようだ。また、mixiという自分の知らない世界を旦那さんが持っており、しかもまったく違う人格をさらしていたという事実も、奥さんの不信感にさらに追い打ちをかけたようである。
あなたのプライベート用PC
パスワード保護してますか
このチョコさんのケースは、「特殊な例」なのだろうか。筆者はそうは思わない。
例えば、ノートブックPCの起動にパスワードをかけているユーザーはどの程度いるだろう。また、仕事用はともかく、プライベートで使うデスクトップPCをパスワード保護しているユーザーは少ないのではないだろうか。ましてや、パスワード作成ソフトなどを使って定期的にパスワードを変更するようなマメなユーザーは、ほぼいないと言っても過言ではないだろう。
多くのユーザーは、起動時に限らず、電子メールやWebなどでパスワードを求められる場合、ダイアログの「パスワードを保存する」にチェックを入れているはずだ。Windowsがパスワードを記憶してくれるのに、わざわざ毎回入力するのは面倒だからだ。しかし、それは裏を返せば、だれにでもチョコさんのような事態が起こりうることを意味している。
チョコさんの場合、奥さんの「このまま放置します」ということばとは裏腹に、やがてmixi事務局がアカウントを停止した。心配した周囲の人々が事務局に通報したのだろうか。実は筆者も、故人のご冥福をお祈りしてmixi事務局にタレ込んだ1人である。しかし、事務局から返信がなかったことを考えると、どうやら別の理由によりアカウントが削除されたのではないかと思われる。どちらにせよ、真相は謎のままだ。
米国でも数多く見られる
「ブログ墓場」
チョコさんの例を見るまでもなく、事故や急病で急逝した場合、ネット上には故人の足跡がそのまま残されることになる。まるで墓場のように、故人の書いた古いテキストが残されているのだ。
現在、米国ではブログが大流行しているが、その中にも故人となった人々が運営していたものも多数ある。しかも、アカウントは停止しておらず、そのまま継続されているものが多い。アプリケーションプロバイダーが用意したブログをそのまま利用していれば、設置費用は無料なので、故人をしのぶ友人たちのちょっとしたボランティアでブログが維持できるからだ。
このように放置されたブログ墓場の中には、荒れ果てているものもあるが、故人の生前のイメージを立派に引き継いでいるところも多い。日本であれば、当人が亡くなった時点で即座にブログを消去する場合が多いと思うが、そこは日本と米国の感性の違いかもしれない。
ともあれ、思いもよらない事故で突然人生にピリオドが打たれることは、だれにでも起こりうることだ。筆者の周りでも、ある友人が数年前に唐突に行方不明になってしまったという事件があった。自転車でふらりと散歩に出たまま帰ってこなかったのだ。捜索の結果、デジカメで漁港を撮影しに行き、突風で2月の寒い海に落とされたのではないかということだった。腰のベルトに装着した多数のデジカメがオモリの役目を果たし、死体の発見を遅らせたとも言われているのだが、いかがなものだろうか。
チョコさんを見るにつけ、この友人を見るにつけ、もし自分が万が一の事故にあってしまったらと考えると、背筋も凍る思いがする。読者諸兄も、ネット上の「死後の世界」には、くれぐれも注意していただきたい。
NETWORKWORLD 7月号(2005年5月18日発売)掲載
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