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教育ルネサンス

ネット モラル(15)

【読者の声】学校・家庭を「教習所」に

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携帯電話の特集が組まれた子供向け雑誌。小学生向けでも特集は珍しくない

 子供や孫のネットモラルを心配する読者は多い。

 「ゲームサイトで知り合った男子高校生に、小学6年の娘が会いに行ってしまい、肝を冷やした」と、東京都内の母親(41)が、ファクスやメールで体験を寄せた。

 サイトは携帯電話専用で、日記や掲示板の機能もある。昨年末の登録直後から、小学生の女児目当てと思われる男性から娘に大量のメールが届き、娘はその中の一人と近所の駅で待ち合わせをした。

 「友達も利用しているサイトだから大丈夫」と言う娘に、「これが出会い系サイトだよ」と教え、携帯電話のフィルタリング(有害情報の遮断機能)もあわててかけた。「このようなサービスの宣伝が、電車のつり広告やテレビのCMで流れていることに不安を感じる」と訴えた。

 携帯電話がほしいという小学6年の娘と家族会議をしたというのは神奈川県の父親(39)だ。

 「みんなが持っているから」「何に使うの?」「学校の友達とメールとか……」「絶対に必要なのか。家の電話ではだめなのか。学校で会った時に話せば」

 そんなやりとりの末、娘は自ら「今は必要ない」と結論を出した。「こういうことを言うと、すぐに『時代が違う』という方がいるが、変わったのは、子供ではなく、育てている大人の考え方では」とつづった。

 ネットでの深刻ないじめについても便りが届いた。

 「孫の知人が、ブログ(日記風ホームページ)で孫の名を使って他人を中傷した。いわれのない批判や脅迫を受け、我慢できなくなった孫は暴力を振るってしまい停学処分を受けた。夫と胸を痛めている」といった事例だ。

 千葉県の女性も、息子がネットで中傷を受けているが対処の手だてがなく、人間不信に陥って途方に暮れていると手紙で訴えた。

 「18歳以下はネット禁止にしてもよいくらい危機感を持っている」というのは愛知県の女性(37)。「自分の子供にはフィルタリングを使っていても、友人のだれかが有害情報を持っていたらボタン一つで流せる」と無力感をつづる。

 山口県の大学教員(59)も「携帯電話に時間を取られ、勉強が二の次になっている。親が携帯電話の使い方を学ばなければならない風潮は愚の骨頂。最初からモラルを考えた電話を販売すればいい」と主張した。

 「携帯電話を販売する時に、子供に危険性を説明してほしい」という声のほか、「大人のモラルをまず正せ」という意見も目立った。現実でもネットでも、子供は大人を見て育っていることを忘れてはいけない。

 疑似インターネット社会の教育システムを提供している国立情報学研究所の新井紀子教授(44)からもメールが届いた。

 新井さんは「子供たちが、学校や家庭という教習所を経ないで、直接インターネットという高速道路に自己流で出ていっている」と表現する。「子供たちは、最初に定期的にアクセスするようになったネットコミュニティーで、匿名の中傷が流れ、著作権侵害があると、それを普通と考えるようになりがちです」

 教習所の役割が大事なことは間違いない。(典)

 次週からは完全実施から6年目を迎えた公立学校の「学校週5日制」を検証します。

(2007年6月16日  読売新聞)

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