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教育ルネサンス

学校 統廃合(17)

団地群 先読めぬ転出入

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多摩市立豊ヶ丘中学校の授業。4階の教室から林立するマンションが見える(1月30日)

 ニュータウンの学校再編には悩ましい問題がある。

 小高い丘の上に立つ4階建て校舎からは、周りを取り囲むように林立する団地群が見える。東京・多摩ニュータウンの南部にある多摩市立豊ヶ丘中学校の生徒数は146人、昨春の新入生は58人。いずれも市立中10校で最少だ。

 学校選択制を市が導入した2002年以降、「小さいながらもがんばっている豊中」を合言葉に特色ある活動を続けてきた。一番の自慢は生徒会を中心に自主的に企画する学校行事だ。運動会では自分たちで考案した創作ダンスで応援合戦を繰り広げ、文化祭では、3年生をリーダーに、教師の手を借りずに練習した全校合唱を披露する。

 授業でも、少人数の特色を生かした指導法を06年度から研究してきた。例えば、数学では、30人の学級に教科担任と講師の2人を充て、全員に発言をさせるような授業を展開している。

 学校が昨年12月、全校生徒に実施したアンケートでは「誇れるような良い学校だと思う」と答えた生徒は91%に上った。また今年度は、約20年ぶりに生徒数が増加に転じ、学級数も4年ぶりに6学級を回復した。

 だが、豊ヶ丘中はこの4月に貝取中(生徒数322人)と統合し、青陵中学校になる。新校の校舎は改築した貝取中を使う。「小規模校の特色としてやってきたものも、できるものは生かしてほしい」と賀川秀人校長(57)。生徒会のアンケートでは運動会の創作ダンスを残したいという声が多く、今後、生徒同士で学校行事のあり方を話し合う。

 1976年の開校時に207人だった豊ヶ丘中は、4年後には875人にまで急増。周辺に東落合、貝取の2中学校が相次いで新設された。それでも90年代の初めまでは入学者が毎年200人前後に上っていた。しかし、若い世代の入居が減り、現在ではさらにその4分の1に落ち込んだ。

 同じような事情は、市域の約7割を占める多摩ニュータウンに共通しており、市は「1街区に2小学校1中学校」が基本となっていた学校配置を見直し、94年から小中学校の統合を進めている。豊ヶ丘、貝取中の統合は7例目、中学校では3例目になる。

 その一方、ニュータウンの北東に隣接する連光寺地区では、新たなマンション開発が進んでおり、連光寺小(児童数478人)は、教室数が限度いっぱいになっている。さらに必要となりそうな2教室分を増築するが、転入者が今後増える可能性もある。

 「ニュータウン地域でも一部のマンションで建て替えが始まっており、再び人口が回帰する可能性もある。今の学校配置で適切かどうか、先は読みにくい」と市教委学務課。

 多摩ニュータウンは、町田、稲城、八王子の3市にもまたがっていて、人口が増加中の町田市小山ヶ丘地区では10年に新設校が開校する予定だ。4市とも「隣接市同士で連携した学校再編をする予定はない」としているが、共通の課題として議論する価値はありそうだ。(高橋敦人、写真も)

 ニュータウンの学校再編 大阪府吹田市と豊中市にまたがる千里ニュータウンでは、吹田市が小学校1校を来春、廃校にする。すでに2003年、分離した小学校を再統合した例がある。一方の豊中市は、03年、市の審議会が「規模に応じた特性を生かすべきだ」とする答申を出しており、市全体で統廃合や分離新設の予定はない。

(2008年2月6日  読売新聞)

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