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教育ルネサンス

学校 統廃合(8)

島外から子供呼び込め

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浦戸二小に向かう途中の市営汽船の船上で、本土から通勤する教員と話す子供たち(11日朝)

 統合された島の学校が、島外の子供を呼び込む。

 日の出からまもない午前7時、ランドセルを背負った子供たちが、宮城県塩釜市の港「マリンゲート塩釜」に現れ、市営汽船に乗り込んだ。

 行き先は周囲が9キロ、人口約120人の野々島だ。島の浦戸第二小学校(児童13人)と浦戸中学校(生徒17人)には、本土に住む小学生と中学生各5人が、約30分間、船に揺られて通っている。小学校は2学年ごとの複式学級だ。

 日本三景の一つ、松島湾にある浦戸諸島には、かつて、東の寒風沢(さぶさわ)島に浦戸一小、西の桂島に浦戸二小、中央の野々島に浦戸中があった。しかし、児童の減少で2004年、小学校が浦戸二小に統合され、05年に同小は浦戸中に併設となった。

 「いずれ、島の学校がなくなる」という島民の危機意識を受けて、市教委が導入したのが、学区外からの通学を広く認める特認校制度だった。

 港までの送り迎えは保護者の責任になる。始業に間に合う船は7時15分出航だ。入学希望者は、その覚悟や適性を見るため、5〜10日間の体験入学も課される。

 小学6年の舟山李生子(りうこ)さん(12)は石巻市に近い東松島市在住だが、昨年7月に体験入学し、翌月には転入を決めた。

 毎朝6時に起き、保護者の車で約30分かけて港まで来る。前の学校では20人ほどいたクラスメートは、浦戸二小では5年生を入れても3人。だが「船で通うのが楽しい。クラスの人数が少ない分、先生も丁寧に教えてくれる」と顔をほころばせた。

 教員は校長以下、小中を合わせて13人。併設の利点を生かし、中学の教師が小学校高学年の授業を担当するなどの工夫で、複式授業をかなり解消した。

 中学で理科担当の斎藤潤也教諭(36)は当初、小学生への授業に戸惑いを覚えた。小学校で何を教わってきたかを十分に把握しきれていない面もあった。だが今では、「小学生でここまで理解できれば中学でも大丈夫だ、と先を見通しながら教えられる」とやりがいを感じている。

 島の小中学校では、総合的な学習の時間などを使った全校挙げての演劇活動にも取り組む。浦戸中の生徒は、仙台で毎年開かれる、寸劇による英語大会で昨夏、県内2位の成績を収めた。

 「特認校でも、魅力ある学校を作り続けなければ、親は子供を通わせない。人間として生きる力を身につけさせる、質の高い教育が必要だ。指導を工夫すれば、一人に多くの時間がかけられる分、学力の向上にもつながる。特認校は、教師の指導力が問われる学校でもある」と山田元郎校長(52)。

 その言葉からは自信が読みとれた。(宮崎敦、写真も)

 特認校 学校選択制の一つで、通学区域と関係なく就学を認める学校。小規模校の通学者を増やす狙いがあるほか、特色ある学校作りの手段として導入する例もある。浦戸二小と浦戸中は、船で通学でき、保護者が港まで行き帰りの送迎をすることを条件に、市内に限らず通学者を受け入れている。

(2008年1月24日  読売新聞)

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