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教育ルネサンス

激戦! 塾・予備校(8)

低学年から思考力鍛錬

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数字のカードを当てる推理ゲームを楽しむ子供たち(鯉城学院広島校で)=前田尚紀撮影

 小学校低学年向けの算数教室に注目が集まる。

 JR広島駅に近い学習塾「鯉城(りじょう)学院広島校」では、週1回の「算数オリンピック数理教室アルゴクラブ」を9クラス開講している。

 幼稚園年長組から小学3年生までが主な対象で、学年によるクラス分けはない。平面や立体を数分以内で決められた形に並べる数理パズル、数字のカードを当てる推理ゲームなど、8種類のメニューを90分間で次々にこなす。

 4人1組でテーブルに座り、木製の立体パズルを組み立てる約20人の子供たちの表情は、真剣そのもの。完成するたびに「できたー」と、元気な声がこだまする。4人は、時には協力してパズルを解き、時にはゲームで対戦する。子供たちは授業中、飽きる様子を一度も見せなかった。

 その一人、三浦裕太郎君(9)(小3)は「算数のパズルは難しいけど面白い」。母親の敦子さん(35)は「もともとパズルは好きでしたが、アルゴクラブに入って試行錯誤する力がついてきたみたい」と目を細めた。

 塾で中学受験向けの勉強が始まるのは、計画的な勉強に必要な集中力が身についてくる小学4年以降が普通だろう。ただ「知識をしっかり身につけるには十分な時間も必要」というのが、高学年向けの授業を低学年で先取りする塾の一般的な考え方だ。

 しかし、同学院の角谷(かどたに)勝己学院長(48)は「低学年では、知識より考える癖や集中力を身につけた方が、高学年になってからも伸びると考えていた。ただ、それに適した低学年向けの学習法が見つからなかった」。

 2005年に始まったアルゴクラブを知ると、すぐに採用を決定。翌春に開いた授業の体験会は、予想の2倍となる約200人が集まった。

 「今の親は子供の時、塾で計算力を鍛えた世代。自分の経験から、計算力が学力のすべてではないと気づいている。一人っ子が多くなり、親の塾への目も厳しく、子供の学力を伸ばす塾を必死に探している」

 06年に実施された経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(略称PISA)でも、日本の子供たちの「科学的応用力」や「数学的応用力」の順位が下がるなど、考える力の不足が指摘された。こうした学力への親の不安感も、アルゴクラブの人気を後押ししているようだ。

 中学受験の大手、四谷大塚(東京)も4月から、都内などの6校舎で開講を決めた。山本利行情報本部長(54)は「1999年に低学年を対象に知能開発を進める『リトルスクール』を作った。高学年までの一貫指導をめざす塾の理念にも合う」と説明する。アルゴクラブは塾の利点として、低学年の子供が確保できることもうたっており、塾の狙いと一致した形だ。

 誕生してまだ3年ほどのパズル型低学年教育が、受験学力だけでなく、人生の糧となるような思考力、発想力を育てることができるのか。真価が問われるのはしばらく先のことになる。(宮崎敦)

 アルゴクラブ 思考力や集中力、忍耐力、マナーなどを学ぶ算数教室として、株式会社アルゴクラブ(本社・東京)が、フランチャイズ方式で加盟校となる塾に開設を認可している。現在、全国の約90か所で開講している。教材は、数学者で大道芸人でもあるピーター・フランクルさんと、広中平祐・京大名誉教授が会長の算数オリンピック委員会などが共同開発した。

(2008年3月6日  読売新聞)

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