脊椎魚介ざざむし

ひらたく言えば魚とかそのへん。
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ダイナンウミヘビ
釣り人から忌み嫌われている関東長物会の
仕込小骨3幹部の一魚。
ちなみに仕込小骨3幹部とは
 
ウツボ (役職:ニシキヘビ)
 クロアナゴ (役職:アナコンダ)
 ダイナンウミヘビ (役職:リヴァイアサン)

である。
見た目から嫌われるだけでなく、こいつらはそれぞれに特徴のある
殺人小骨を装備している。
どれも広くはウナギ目に属するので皮下に埋没骨を持つのだが、これがウナギのように細くて
無視できるものなら良いのだが、この3種近縁はどれも普通に加熱するだけでは
歯に当たり、舌に突き刺さり、喉を切り裂き、とてもまともに食える代物ではない。
 しかし、揃いも揃ってこいつらは
デカイ。
中でも今回の食材であるダイナンウミヘビは最大2mを超え、陸に上がってからの暴れっぷりも凄まじく、
魚類のくせに弾力ある鞭のような体でヘビに似た動きをし、首を落としてもしばらく暴れている様もまさにヘビ。
しかもウツボと同様に口の中には
3列に鋭い歯が並ぶ。
真ん中に1列あるのがどうにも納得いかない不思議生物のひとつだ。
文句あんのかコラ
よく釣れるのは50cm〜1m程度のものだが、これがまた性質が悪い。
長さのわりに体は細く、且つ背骨が太く硬く、更に小骨が多いのだから始末に困る。
こいつ、薄く輪切りにして二度揚げしても背骨が異様に硬いのだ。
「大抵のものは揚げれば食える」と呟かれる素人の常識を覆される魚でもある。
そりゃぁ釣れても嫌われる訳だ。
当然、煮付けにしたって小骨も背骨も硬く鬱陶しいので、ロクな評価を見かけないのだが、
実はリヴァイアサンは圧力鍋に弱いので装備しておこう。良い子の豆知識だ。
アナコンダなどは対圧力鍋防御力が高いので圧力鍋を使ってもまるでダメージを与えられないが、
リヴァイアサンに関しては
圧力鍋で40分〜1時間ほど自動戦闘にして茶ぁしばいてれば余裕である。
蚊取り線香
頭や背骨に至るまで水煮のサケ中骨やサバ缶と同じ程度の柔らかさになってしまう。
これなら誰でも快適に完食可能であろう。
見た目が悪いなどと
我侭言うのであれば、にでもにでも染めると良かろう。
 
 たま〜に巨大なのが釣れる。
177cm2kgちょい
 
長いにもほどがある!
この魚、ミミズのような体系は大型化してもそのままで、
尻尾の先に至るまで真円状で身が厚く、喰い出があった。
まぁ、持ち帰ったはいいが、まな板5枚も必要な長さで狭いキッチンに乗る訳もなく
5秒ほど途方に暮れたが、気付いたらブツ切りにして開かれていた。
小人さんありがとう
これで半分ちょい
ヘタクソなりに骨切りをしてみた。
こんなに巨大な個体でも小骨は細く、ウツボで40cm、クロアナゴで60cm程度と同等であろうか。
しかも3種の中では飛びぬけて筋肉質で、ヌメリの臭気もクロアナゴよりは断然薄いのは評価できる点だ。
ここまでできれば圧力鍋を装備しなくても勝ったも同然。
 
☆春ダイナンの塩焼&照焼

生首で遊んでたら焼きすぎた。
照焼は美味いんだが、素材の持ち味はどちらかといえば隠された感じ。
その点、白焼きや塩焼きは素材の味がストレートに感じられ、油なんて1滴も使っていないのに
こんなに脂乗ってたのかと思うくらいに
濃厚な脂が舌を覆い、香ばしい香りが鼻をくすぐる。
ほんとに脂が強いのでビールやチューハイなどの炭酸系が合う。
むしろ何か呑んでないと脂当たりする感じ。
 
☆海王の湯引き梅肉ソース添え

骨切りしたのなら、これやらなきゃ嘘でしょう。
プリプリモッチリでほのかな甘味があり、梅肉ソースによく合う。
調理法はハモのそのまんま。骨切り間隔は1.5〜2mmでも全く問題はなかった。
 
☆腹身の酒蒸し葛餡がけ

内臓を覆う部分に限っては小骨が存在していないので骨切りが不要。
小型だとこんなことできないが、大型ならば腹身だけで2〜4人前は取れるので今回は結んで蒸し物に。
加熱前はペラペラだが、蒸しはじめるとみるみる膨らんで丸くなる。
まるで小型が釣れた時に絡んで自滅している様を彷彿とさせる仕上がりだ。
皮のゼラチン質には脂も多く乗っており、肉の歯触りは存在感を誇示しつつも柔らかい。
湯引きからは想像し難い旨みある柔らかさ。
 
☆もっちり天

腹身を揚げると蒸し物よりも遥かにモッチリ感が強くなる。
天麩羅にするには骨切りをした身でもよいが、それだとフワフワというかホクホクというか、むしろ
フワホクって感じ。
クセは全くなく、美味しい。塩でも天つゆでも可。
 
☆海王丼
世紀末丼伝説
アラ部分はさすがに硬すぎるので出汁にするか、圧力鍋攻撃するかしかない。
今回は殆ど骨ばかりを圧力鍋を使って梅でアクセントつけて煮てみた。
骨までもしゃもしゃカルシウミー。
底上げして圧力をかけて蒸し、骨を柔らかくしてから他の料理に使用するのもテかもしれない。
 
☆ダイナンチーズボール
とろり
骨切りなんて面倒だから論外という声も聞こえそうな気がしたので、フードカッターですり身にしてみた。
吸物・揚げ物と試してみたが、どちらもニベやエソのような期待した歯切れは得られなかった。
だが、骨切り不要でクセがないという意味では子供にも平気で食べられる食材と言える。
モツァレラチーズを詰めて揚げてみたところ、歯切れが弱い分、バランスがとれてマァマァな感じ。
ウナギやアナゴよりも開くのは楽なので、この調理ならば慣れない人にも案外楽にできるはず。
 
 しかしまぁ、改めてこうして食べてみても、一体この魚のどこが食えない代物だというのか。
魚に対する愛が足りないんじゃないの?
差別と偏見と怠惰はいかんよね。


記 2005.04.12


ハダカイワシ
 相模湾以南の深海で獲れる魚ってことだけど、もうちょっと北でも水揚げされる中にちょろちょろ混じってる。
昔、よく市場をうろついてた頃には10cm程度のハダカイワシが落ちていて、
マンボウの切れ端とか、値のつかない雑魚を貰ったり拾ったりしてたものだけど
この魚は水揚げされた時点で鱗も皮も全て剥げてしまっているので
鮮度もよくわからずとても不味そうで、持ち帰って食べる気になったことがなかった。
落ちていて拾ったはいいが、鮮度が良いにも関わらず食べずに捨てていたのはこの魚とキホウボウの仲間くらいな気がする。
しかし、この魚を干物にして食べる地域があるのだ。
発光器は残ってる
 高知県と三重県では、ハダカイワシを干物として扱し、春先から初夏がシーズンらしい。
ハダカイワシという名は、見た目の通りの状態で水揚げされるからであるが、
この干物の名もまた見た目通りで「ヤケド」と呼ばれる。
ヤケドをファイヤーするとこうなる。
てかてかふんわり
 写真ではわかりにくいが、ものすごい脂の量。
深海魚なんてのはだいたい、水っぽくてゼラチン質か、脂ギトギトかどちらかのパターンが多い。
こいつは脂の乗りがものすごく、焼きはじめると早々に脂が浮きはじめ、パチパチと音を立てる。
脂が多いゆえか瞬く間に焼き上がり、焼きたてを口に入れると
フワリとした口当たりながらも程よく存在感のある肉質で、脂は意外にしつこくない。
顔はどことなくカタクチイワシに似ているが、味自体もカタクチの目刺しとマイワシを足したような感じで、
内臓の味も目刺しっぽく、意外性は少ないが、骨も頭も柔らかくほろ苦い内臓の味も加わってビールによく合う。
知名度からいけば珍味の類になるのだろうが、この魚、なによりも安く、万人向けな食味。
いくら旨くても、いくら珍しくても、高価であればそれは当たり前な感じがして感動は半減するもの。
100g100円程度で買えてこの味、旅先で見かけたらビールのお供に買ってみてはどうだろうか。
 
 しかしこの魚、これだけ脂が乗っているなら生で食べたらどんな口当たりなんだろうか。
さぞや口溶けの良い刺身になるのではないだろうか。
最初から剥けた状態で水揚げされるから、販売側として生食を勧めるのは衛生面で難しいのかもしれない。
今度遭遇したら是非生で口にしてみたいもの。
だが最近は衛生面から、港や市場で魚を拾うのも保健所からの規制が入ってるとかいう話も聞くし、つまらない時代になったもので。

記 2005.04.02


シビレエイ
 いままで自然界でシビレエイなんて見たことなかったのに、今季はやたらと目撃する。
ついには何故かエギングで釣れてきてしまう始末。
電気を出すエイとして有名だが、50〜60Vってどのくらいなのか、いまいちピンとこない。
つついてみても電気を出さないので、バケツに入れようと両手で持ち上げたら・・・
バリッ!
ゔお゙っ!!!
思わず叫んでしまった。
両手の平が半分ほど、ビリビリと余韻が残っている。
・・・・許さん・・・・許さんぞ・・・・・食っちゃる!
貴様の放電能力 オレ様が貰った!
目がすんごいラブリー
 ディスポ装着ッッ!!!!
いくら電気を発しようがゴムゴムの能力の前に貴様は無力同然!
・・・・・・・皮剥きにくっ(´Д`;
逝ってもらって素手にしたら簡単に剥けた。
気味悪いかも
 頭部両脇にそら豆状に存在している白っぽいところが発電器官だ。
ゼリービーンズのような、巨大化させた蜂の卵のような、ぶよぶよしたものが垂直にビッシリと敷き詰められた様相だ。
これのおかげで、随分と鰭が小さいことがわかる。
この魚、理科の教材などで発電器の観察に使われる以外は全く利用されてないらしい。
せっかくだから、この1匹でいくつか料理してみようと思う。
 
☆ショート荒井(洗い)
 せっかく鮮度がいいのだから、生で食べておかねばなるまいて。
左が鰭、右が発電器
 見た目ゼリービーンズだが柔らかく、噛むと音もなく潰れてトロリとする感じで食感はたいしたものではない。
ただ、臭味どころか、
生シロエビを食べてる時のような香りがし、舌に絡み、ほんのり甘味もある。
特筆すべきはこの甘味、魚の甘味というよりは、香り同様にエビに近い甘味なのだ。
鰭は軟骨を切る方向に削ぎ切りにして同様に洗いで食べたが、こっちは歯ごたえ良好。
臭味もなく、食べ易いが、こちらにはエビのような甘味は殆ど感じない。
発電器官に歯ごたえがあれば言うことなかったんだがなぁ。
逆に言えば、味はあっても歯触りが邪魔にならないので、うまく他の食材と組み合わせれば面白い料理ができる気がする。
 
 ひとまず、今回は煮る・揚げる・焼くの3通りでも食べてみよう。
左から時計回りに
☆サンダー焼き(さんが焼き)
  普通の
さんが焼きの味噌を減らし、コチュジャンを加えてピリ辛なさんが焼きにしてみた。
 軟骨もよく叩いてタップリ混ぜてあるのでコリコリしていてなかなか良い。
 
☆電麩羅&プラズマブレイド(天麩羅&唐揚げ)
  発電器官と尾部の半身は天麩羅に、胸鰭1枚を唐揚げにしてみた。
 エイヒレの唐揚げはお約束的だが、やはり小さなエイの鰭は唐揚げで美味しい。
 揚げても普通の筋肉部分はふわりとしていて柔らかい口当たり。
 問題の発電器官だが、衣がカラッとしてるのに、口に入ると中身が一瞬で溶ける。
 まるで脂でできているかのようだ。
脂なのか?
 揚げてしまうと、生の時のようなエビっぽい甘味がなくなってしまうようだ。
 
☆ライトニングゼリー(煮凝り)
  煮付けた後、冷めても全然身が堅くならない。
 皮に鱗の存在を感じないので、ゼラチンたっぷりっぽい皮も一緒に煮込み、冷やして煮凝りにしてみた。
 臭味もなく、美味しい煮凝りになった。
 鰭は軟骨がコリコリと心地良く、身は柔らかくほぐれ、いっぱい入れた発電器官は随分縮んだが、口の中では脆く溶けるように潰れる。
 皮は味がよく染み、モチモチした食感になるが、やはり発電器官は過熱すると風味が消える。
 
〜総評〜
 実験材料にしか使われないというのは、漁獲量の少なさと、見た目の悪さと、手軽に食べられる過食部の少なさと、電気を出すという、
これだけ条件が揃ってしまえば、普通は流通しないというのが容易に納得いった。
しかし、実際には全くクセがなく、ちゃんと適した料理法ならばもっと美味しく食べられることが今回の限りでも想像できる結果に。
さほど大きくならないし、軟骨魚類なので殆どの部分を食べることができる。
まぁ、あえて食べるために、というよりは、飼育するために捕獲したいなぁ、と個人的には思ってしまうのだが。
少なくとも、大型化しすぎたアカエイなんかよりはずっと味わい深く食べられる気がします。
発電器官以外は小型カスペの感覚で。

記 2003.05.09


ゴンズイ
 ナマズの一種で海に棲み、第一背鰭と両胸鰭の棘条計3本が毒刺になっている。
厳密には毒刺といってよいのか迷う構造なのだが、ここでは割愛する。
刺されると
激痛を伴って腫れ上がり、その程度や体質により呼吸が苦しくなったりもする。
死者も出たことがあるそうだ。
これで50匹4kg弱。あっという間にこんな数。
ニョロリな見た目
ぬるぬる、しかも。そんなこんなで釣り人には嫌われ、釣れても捨てられたり放置されることが多い。
しかし、実際には昔から食用とされている地域も多い魚なのだから偏見はよくない。時には市場にも流れたりするそうだ。
この毒は熱分解性なので加熱すれば問題ない。(ただし、毒刺が刺さらなくても傷ついた手で扱うと毒が侵入する)
今回はそんな釣り人の嫌われ者であるゴンズイの汚名を晴らすべく、その真価の一部を記すことにする。
私達にとっては当たり前の食材のひとつだ。
 
@まず、調理前の注意点が2つある。
・毒刺の処理。
  
慣れれば持ち帰ってからでも良いが、事故を防ぐためには釣り場で処理することを薦める。
  鈎からはずす前に、ぶら下げたままハサミで3本の刺を切る。握力の弱い方は爪切りでもいいだろう。
  切った刺はそのへんに散らかしておくと危険なので早急にゴミ袋か海へ。
・鮮度が落ちないうちに内蔵を取り除くこと。
  
やたらと内蔵が臭いだすのが早いので、身に移らないように早急に内蔵を捨てること。できれば生きてるうちに。
  釣り場で刺をとった後に鈎をはずし、そのハサミで頭の付け根を背中から背骨まで一気にチョキンと切り、
  折るようにして引っ張ると腎臓と卵巣以外が一気に全部抜けるので、こうしてから持ち帰ると鮮度も保てるし、後処理が楽だ。

以上2つさえ忘れなければ、大抵の料理には使える有用魚だと思う。
 
@より美味しく頂くための豆知識
・ゴンズイは冬が旬である
  
脂の乗りが全然違うので、どうせ食べるなら冬がオススメだ。
・棲んでいる水質により味に差が出る
  
ゴンズイには予想以上に脂が多く、脂が多いということはダイオキシンなどを蓄積しやすいとも捉えられるのだが
  そういう関係もあってか、綺麗な水域のゴンズイは臭味もなく美味なのだが、汚れた水域のものは臭味がある。
  これはナマズにも同様に顕著に感じるのだが、臭味の強い場所にいる魚はあまり食べないほうがいいのかもしれない。
・卵は不味い
  
一見、蜜柑の房のように鮮やかな黄色の美味しそうな卵なのだが、いまのところどうやっても不味い。
  まるでキャラメルの失敗作とでも言おうか、
ボソボソ感が強いくせに、くちゃりと歯にくっつく。捨てていい。
・ヌメリをとる
  
おろしたゴンズイはまとめて多めに塩をふり、手でかき混ぜるように揉んでヌメリをとると仕上がりがいい。
 
@実際に料理してみよう
☆塩焼き・味噌汁・蒲焼・煮付け・天麩羅・フライ・骨煎餅
 蒲焼(身が薄すぎて竹串では太すぎる)
  ゴンズイの
定番料理。
  基本的には
ナマズと同じ味だと思ってもらって差し支えない。
  
・天麩羅は3枚におろしてから。風味もフワフワな食感もナマズそのものだ。
  ・味噌汁にするととても旨味のある味噌汁になるが、身から出汁が抜けてしまうので身の旨味は落ちる。
  ・蒲焼はナマズ同様サッパリしてるのでウナギと好みが分れるところなのだが、いかんせん小さいので淡白さが引き立ってタレが勝ちすぎる。
   よほど大きいのが釣れない限りはあまりオススメしない。最低25cmかな。
  ・煮付けは醤油ベースでも味噌ベースでも良いが、煮る前に両面を乾く程度に焼いておくと風味もよく仕上がり、鰭も美味しく食べられる。

 
☆キムチ鍋・干物・燻製
 干物・燻製
  
定番料理から脱しようとやってみたもの。
  
・キムチ鍋やチゲ鍋は簡単だし、魚の風味が苦手な方にはオススメだろう。
   釣り場でも簡単に作れるのがいいところだ。
  ・干物は透明感が引き立ち旨味が薄いかと思いきや、焼いてみたら
驚くほどに脂がしたたり落ち
   うっかり強火でやってしまうと
引火して燃えるので注意。
  ・燻製は本格的に作ってもいいが、たくさん作るのでなければ簡易的な方法で充分だと思う。
   非常に立派な味になる。

 
☆ゴンズイのサンバル焼きココナッツソース
 辛さにも甘さにも負けない
  
ちょっとクセの強い料理にも合うことがわかってきたのでシンガポールっぽく料理してみた。
  予想以上に、ココナッツにもサンバルソースにも負けず、食感と旨味がバッチリ調和。
  ゴンズイの脂がうまい感じに口の中で全体の味をまとめる感じがする。
  正直なところゴンズイの良さが死ぬんじゃないかと思っていたが、意外に引き立って驚いた。
  料理に使ったのは中型だったが、もっと大きいのが釣れたらこれはオススメ。
 
 有名な大衆魚であっても処理を間違えれば不味くなるのと同様のことが言えるが、
それでも、かなり広範囲の料理に対応できる魚だと思う訳である。
ゴンズイの汚名を晴らす会では斬新なレシピを募集中である。

記 2003.03.17


タウナギ
 なんだ、ウナギか。
と、思う方もいるかもしれませんが
おれんぢ。
見ての通り、全然違う魚で、鰭という鰭が全く無く、肋骨も無く、ウナギとは別の科の魚です。
乾季の長い、環境の悪い所では8ヶ月も水の無い土の中で仮眠するという、殆ど肺魚同然の魚だ。
西日本では水田に穴をあける害魚として知られ、水が無い所を移動してまで生息域を広げる。
とはいえ、関東では完全な移入種と思われ、一部では繁殖もしている模様。
時々
空気を吸うために水面に浮いてくるので見たことある人もいるかもしれない。
動きはものすごく鈍い。
 
 日本では食用としての馴染みは薄いが、アジアでは重要な食用魚のひとつとして知られ、
外国人の多い地域などでは100g300円前後で売ってるので、食用にはそれを買っても良いでしょう。
ウナギより赤くて黒い
何気にタウナギ食べるのは初めてなので、普通にウナギのようにさばけるかと思いきや、
動きが鈍いくせに、かなりパワフルでやりにくいったらありゃしない。
しかも骨がウナギより太く、変なので普通にやったら身が残ってしまうようだ。失敗。
とんでもないことに、骨と頭だけになっても2時間も動いていた。
それより、なんだよこの肉の色は!
黒いよ!
塩焼き・炒めもの・骨煎餅
 干物にしてから野菜と一緒に炒めて食べたりするのが一般的と聞いたのだが、せっかくなので
少し塩焼きにしてみたら、見た目はマズそうなのに、これがウマイ!
何コレ!
ウナギとは全く違う、いかにも
蛋白質!といった味。
かなり味は濃厚で、しかしくどくない。
脂の乗ったマハゼの塩焼きなんか近いかもしれないが、もっと味は上等かも。
これは意外にイカス!
 骨も勿体無いので骨煎餅にしてみたが、これもやっぱりウナギよりはサッパリ味。
ただ、頭の骨だけは異常に硬く、とてもじゃないが食べられたもんじゃない。
まるでカニ爪を殻ごと食ってるみたいだ。
 
 これは期待できると思い、干物にしてから野菜と炒めてみたが・・・・
たいしたことねぇなぁ。
なんかコツがいるんだろうか?
どう考えても、干物にするより、そのまま塩焼きのほうがうまいよ。
塩焼きは間違いなくウマイと言えるし、害魚扱いされてる上に移入種だから、採捕禁止区域以外なら獲っても誰にも文句言われないでしょう。
ガンガン食っちまいましょう( ̄▽ ̄)ノ

記 2003.01.14


アカエイ
 普通に魚屋にも並ぶという意味では珍しい魚ではないんだけどね。
初めて釣ったエイが22kgのアカエイだったんよね。
全長148cm・体盤幅85cm 22kg雌
こんなもん持って小田急線で帰ってきたんだから、我ながら阿呆ですな。
だって、釣った時ナイフ持ってなかったし、このサイズのを上げるのに65分も格闘して弱らせた挙句
重すぎてギャフで傷つけないと上げられなかったから、瀕死にさせた以上は責任もって食ってやらんとね。
 
 とはいえ、エイなんてさばいたことないのだ。
サメは何度か解剖してるからわかるが、エイは一体どんな構造してるのかサッパリわからない。
それ以前に、わかりやすく言うと75cmコタツを斜めにして尻尾を生やしたサイズなのである。
当然まな板なんかに乗る訳もないので玄関を占領して解体開始。
血の海を掃除して撮影(既に下パーツは配布済)
 これは・・・6畳一間でアンコウの吊るし切りをした時なんて比較になんねぇよ。
なんだかもう、巨大すぎてワケわかんねぇ。
つーか、骨の位置がおかしすぎる。
さばき方がわからないので、とりあえず変則5枚おろしにしてみたが、後で魚屋の某超絵描き様様に聞いてみたところ
下まで一気に切り落としてからブツ切りにしてしまえばよかったらしい。
なんて豪快な!
 しっかし・・・肝臓だけで軽く2kg以上ありますが?
腸の螺旋弁の幅も親指より太い。毒針も10cm以上。激しすぎるぞ。
解体してる間に、食いきる自信がなくなってきた。
 
 せっかくだから売ってない部分も食っておかねばなるまい。
石畳のように歯が並んでいる
これが口である。
顎の両脇に、唐揚げでいうチューリップのような大きな筋肉塊があって美味そうだ。
とりあえず煮てみよう。
・・・・・・。
 まるでミイラとかフランケンシュタインの口みたいだ。
さて、問題の味はどうだろうか。
・・・・・
・・・・たいしてうまくねぇなぁ。
ちょっと水っぽい鶏肉みたいだ。しかもちょっとクセがある。
(役に立つ一口MEMO)
 この時、軟骨魚類といっても歯だけは堅いから間違ってもエイの歯は食べないほうがいいぞ!
 
 メスだったので卵も持っていた。
季節が季節だったら小エイが詰まっていたのかもしれないな。
これも煮てみよう。
ちょっと亀の卵巣に似てる
煮ても枝豆よりデカいんですが。
食感は・・・鶏の卵巣のような歯触りに、少しだけモッチリ感ボソボソ感を足したような微妙な感じで、
たいした味はない。
魚の卵じゃねぇよコレ。
(役に立つ一口MEMO)
 いらなかったら、銀杏に見せかけて茶碗蒸に入れて誰かに食わせてしまうのがいいぞ!
 
 さて、2kg以上もある肝臓だが、捨てるには忍びない。
しかし踏みとどまれ。
サメの仲間の肝臓からはビタミンAの錠剤が作られるほどにビタミンAが多いという。
ビタミンAはシロクマの肝臓もそうであるが、蓄積しすぎているそれは人体に猛毒なのである。
アカエイの肝臓がどうなのかはわからない。
とりあえず食べる文化はあるらしい。
ちょっとだけ煮て食べてみたが、普通にコクある肝だな。
ただ、色が灰色っぽいだけに見た目がちょっとね。
(役に立つ一口MEMO)
 全部一気に食えば多分会社や学校をズル休みできるぞ!
 
 本体の身であるが、大きく分けて3つに分類できる。
1)柔らかい肉質(鰭の大部分)
2)普通の魚っぽいしっかりした肉質(尻鰭・尾・腹部)
3)軟骨
 2は刺身でいける。クセが出る煮付けよりも個人的には刺身のほうがいいと感じた。
問題は1と3である。
要はエイヒレなのだから、焼いたら美味いのかな?
と思い、焼いてみたらかなり不味かった。
クセがありすぎ、軟骨も太すぎて食間バラバラすぎる。
ここまで大きくなると、焼いて食べる場合は軟骨だけのほうが美味い。
 肉部分はやはり煮付け煮凝りが妥当だな。
他に唐揚げカレーなどにもしたが、なんか・・・質の悪い鶏肉みたいな感じ。
カレーなんて30時間煮込んだら、口の中で軟骨がクシャクシャいって変な感じ。
見た目につまらんから写真はいらないよね?
 
 ホンオを作るというテもあるけど
アレはもう勘弁です。
 
 食っても食ってもなくならない肉塊。
冷凍庫を開ける度にウンザリしてきた。
小さかったらエイヒレとか作って食べ甲斐あるんだけどなぁ。
そしてその後、メーターオーバーのアカエイが散々釣れるハメになるのだが2度と持ち帰っていない。

記 2002.10.26


おたまじゃくし
 いくらでもいるのに、日本では食用にしてる話はあまり聞いたことがありません。
一部の地域で寿司ネタとかに使われてる話を聞いてるくらいです。
中国のほうではやはり食べる人は食べてるみたいですね。
 
 まず、オタマジャクシといってもカエルの幼生な訳で、
成体が有毒なものは食べないほうが無難でしょうね。
アマガエルとかヒキガエルとか。
そのへんも踏まえて、今回はウシガエルの幼生を用意しました。
10cm弱の中サイズ。普通はこのへんで脚生えはじめ。
 ぇーと、
まず、どんな料理にするにしても共通の下処理があります。
内臓は必ず取り除いておきましょう。
当たり前のようですが、これでもかという程に血生臭く且つ泥臭いです。
その後、塩で揉むか、酒で洗っておくとベストですね。
 
 ☆揚げオタマ
やっぱ基本は揚げですかね。
ヌメってるので必ず粉をつけてから衣をつけないと剥げ落ちるので注意。
揚げすぎた
 カエルの幼生だけにカエル肉を想像しがちですが、どっちかというと肉質は魚に近いです。
ただ、小さくてもゼラチン質が多いので歯ごたえは無く、プルプルです。
そして、骨は殆ど感じません。
かろうじて堅めな胴部の骨も軟骨っぽくて気になりません。
内臓を取った時の猛烈な生臭さは消えてしまうので気楽に食べるならこれがいいのかもしれません。
 
 ☆茹でオタマ
揚げて食べても味はしっかりわかったが、もっと判りやすくするために茹でて食べてみた。
食欲そそらねぇ・・・
 こうして見ると小さいナマズっぽく見える。
茹でてると透き通ってきて、嫌なことを思い出します。
小学生の頃のある学校帰りに、拾った金網で罠を仕掛けて、翌日上げたら5Lバケツに水無しで満杯のオタマ。
なんとなくバケツを持ったまま家路につく途中に目に入った稲刈後の籾殻焼。
何故か落ちている鉄板。
数分後、オタマ達は1匹残らず焼かれていました。
透き通ってきて、肉は白濁し、血管が青黒く目立って見えたのは今でもしっかり覚えてます。
子供って残酷ですね。
茹でたオタマも、もうちょっと白っぽくしたらその時の焼きオタマにそっくりです。
 本題に戻りましょう。
味は、やっぱ魚っぽいですね。
生臭さは塩茹でするだけでも消えてしまうらしく、味つけなくても食えました。
ただ、いかんせん見た目が美味そうじゃないですからね。
茹でるだけで食えるという点からすれば、いざという時の食料にはいいのかもしれません。
 
 まだやったことないけれど、この口あたりと、湯通しで臭みが飛ぶことから考えて、
尾部ばかりを使ってオタマ汁にしたら美味いかもしれません。
カエルのアラ汁とかと似たような感じになる気がします。
気が向いたら今度やってみよう。
 
 そういえばウルルンに出てきた偉い中国人料理人がオタマでラーメンの出汁とってた
何匹茹でたらラーメンの出汁になるほどの味が出るんでしょうかね?

記 2002.09.05


トラウツボ
 ウツボは一部地域で食用にされてるようで美味とか言われてるんだけど
他のウツボはどうなんでしょうかね。
ドクウツボが有毒化することは知られてるけど、他がそう言われないあたりからして
食されたという事実はあるんではないかと推測。
釣れたトラウツボを食ってみました。
カッコイイー!
 いやまぁ毒々しくもカッコイイ73cm♂。
さばいてみると予想以上にとんでもなく切りにくいブ厚くブヨブヨで刃物から逃げる皮。
しかし、身はなんとも美味そうな美しい白身。
これは結構期待できるかも。
塩焼き・中華炒め・煮付け
 結果はキビシかった。
まず塩焼きで食ってみたのだが皮が臭い。
かなり臭い。
ケミカルチックなニオイだ。
肉自体は繊維の短い鶏肉という感じだろうか。
 
 仕方なく、湯引きした身を、臭みを消すつもりで胡麻油と五香粉で炒めた後、
更にキムチ鍋の素で炒め煮にしてみた。
まだ臭うかコノヤロー!
食えなくなはくなったが、それでも皮を噛んでいると臭みは感じられる。
DDTケミカルナマズ風味はかなりの強敵のようだ。
素直に身だけ食えということか?
しかし、あまりにも皮が多くて捨てるのは忍びないのだ。
 
 では皮がトロトロになるまで煮てみてはどうなのか。
極めて普通に甘辛く、時間長めに煮付けてみた。
・・・・・・普通に食えるじゃん。
皮の質は脂肪とゼラチンが半々くらい混ざってる感じがする。
 
 素直に身だけだと食えるものになるんだろうか。
天麩羅にしてみたらナゲットみたいな歯触り。
でもやっぱりなんだかちょっとナマズっぽい風味もある。
ふんわりした感じはしない。
バターと胡椒で炒めてみたら、これがいちばん美味かった。
いままでの苦労は一体・・・・
 
 ウツボは干物で売られている地域もあるとのことなので
トラウツボでも作ってみた。
尾部30cm使用
焼いて食ってみたが・・・・・
臭いっミ〓■●_
結局はがネックかよ。
肉自体は筋繊維が短いからかなんなのか、カワハギの干物みたいな感じだ。
・・・旨味はそれほど強くないが。
いいとこなしかよ!
売ってるのは味醂干しみたいに漬け汁に漬けてからなのかなぁ?
それともウツボとトラウツボでかなりの味の差があるのか?
謎は深まるばかりであった。

記 2002.06.23

 
 後日、ウツボとかアミメウツボとかも食べてみたり。
アミメウツボの若魚49cm
 んで、思ったことは、鮮度が問題なのか種類が問題なのか
はたまた大きさが問題なのかいまいちわからないんだが
とりあえず小さいウツボは臭くない。
ただし、死ぬとすぐ腐るから注意。
姿煮
 皮はモチモチしてて、身は綺麗な白色で柔らかい。
それなりに美味いと思う。
肋骨はないからいいのだが、やはり背骨に沿った小骨がかなり邪魔なので
姿煮にするなら圧力鍋で処理したほうが快適に食べられると思う。
 
 姿煮で食べる場合に気をつけたほうがいいのは、
ウツボの喉元あたりからは釣鉤がいっぱい出て来たりするとこでしょうか。
頬肉がものすごく発達してるけど、食べる時は気をつけましょう。

追記 2002.08.18


金魚

 魚系はどうもわかる人にしかわからんのが多いようなので
わっかりやすいのいってみよーぅ。
クロデメキンとピンポンパール?
 元々、金魚なんて変異のフナが根源ですし、大量に増やされて、人間の勝手で選ばれた氷山の一角以外は
クズ金魚として、使われても肉食鑑賞生物のエサや金魚掬い用として捨て値で消費されています。
可愛そうだからと自然界に放つなどもってのほかだが、放ったところで目立ち、遊泳力の退化した彼らは
真っ先に野生生物のエサとなるのがオチなのです。
いわば、人間に飼われるか、死ぬためだけに生まれてきた生物です。
その利用法の一端に食用もあっていいはずです。
 
 さ、ウンチクは置いといてサッサといきましょう。
セットアーップ!
まな板の上の金魚達は衣にダイブ、あまりやる気なさそうに衣まみれになった。
熱した油にポイ。
バチャバチャ・・・
カラッと参上(惨状?)
 予想通り、デメキンの目は爆発してしまうようです。
この2種を選んだのは腹が大きくて内臓が美味そうという理由だけなのですが結果は果たして?
 
 やはり栄養状態の飽和な条件で生育しているのもあってか内臓は発達してますね。
ただ、肝臓だけが極端に発達してるのを期待したら、そうでもなかったので、ちょっとだけホロ苦い大人の味。
内臓の香りはペレットっぽいので、良く言えば養殖魚特有の香り。
身はちょっと水っぽいフナかな。クセはないです。
そして骨が柔らかいね。一部以外は気にならない。
ぬるま湯に浸かって育った彼らの味からはやはりフナの野生は感じられなかった。
和金やコメットみたいなタイプは甘露煮のほうがいいかもしれませんね。
 
 これからの季節、子供達に付合わされ夜祭に出かけるお父様方の中には
たいして美味くもないリンゴ飴などまで食わされ、
飼えもしないのに子供達が取りまくった金魚を手ぇいっぱいにぶら下げて
内心不本意に帰るお父様もいることでしょう。
そんな時には始末の仕様のない金魚を使ってビールのおつまみ一品、夜祭の余韻を楽しむのはどうでしょうか。
ついでにお子様方にも生命の大切さを教えて頂けると幸いです。
 
イヤですか。
そうですか。

 記 2002.05.05


オヤニラミ(多摩川産)

 知らない人にとっては、一見べつに何ってことないただの魚なんですが。
日本の淡水魚の中では珍しく興味深い産卵・育児行動を行う種で
水質汚染や河川工事による環境悪化で各地で減少していることもあり
ファンクラブが存在するほどにマニア間では人気あのある種のひとつです。
 しかしこの魚、関東にはいないはずなんですが。
どうやって静岡とか飛び越えて自然に移動してきたというのかね?
いけませんねぇ。
どう考えても放流に混じったというよりは、故意の放流による繁殖でしょう。
好きな魚が近くにいればそれでいいというような身勝手な行動が在来の他種を追いやる可能性の認識不足。
 
 そんな訳で某日、そんな移入種を持ち寄って利根川河川敷でバーベQ。
その中の一種がオヤニラミだった訳ですが、
並ぶ生首
飛び散る内臓
ファンが見たら絶叫しそうな光景が。
 
 大きめのは塩焼きで食べましたが香ばしさもあってか、さほど臭みも感じず、白身でおいしゅうございました。
こうなっちまうと、パッと見はカサゴだかなんだかわからんね。
 
 私もオヤニラミばっかこんなにさばいたの初めてデスヨ!
しかもまな板代わりの紙皿の上で、ただの折りたたみナイフで無造作に(笑
でもなんかベラみたいな青い身色してますよ?
下のは卵。チョト臭かった。
 天麩羅で食べましたが、カワムツのような苦味はなかったものの、
臭みはこの日食べた8種の中で最悪でした。
まぁ、食えないほどのものでもないんで、ちゃんと下ごしらえすれば食べられる魚ですね。
 
 今回の大切なところは、カワイイからとか、希少だからというのは
場合によっては適用すべきではないということで。
(この日に食した種)
 ムギツク・タモロコ・カワムツ・ブルーギル・ドンコ・オヤニラミ・アユ ・タカハヤ

記 2002.04.18


アカヤガラ

 いやまぁね、図鑑では見るけどね。
大抵「美味」って書いてあるけど売ってるのなんて見たことなかった。
こいつも見た目が悪い魚は美味いの法則が適用してるんだろうか。
それが目の前で売ってたんだから私が買ってこない訳がない。
新手の火炎放射器?
 なんか妙なものが飛び出てる怪しいものを持って満員電車に乗る迷惑者。
だってこいつの体って後ろ半分しか曲がらないんだからしょーがねーじゃんよ!
切るの嫌だったし。
 いんや〜〜〜
見れば見るほどにマヌケ面怪しい魚だよなぁ。
1.5mくらいになるけど、こいつは125cmでした。
 
ブツ切りにすればいろいろ試せそうです。
 
 んで、捌いてみたんだけど、腹が長い割には内臓はシンプルで
太い腸がまっすぐ通ってるだけみたいな感じ。
典型的な肉食魚ですね。
腹が長いばっかりに、ブツ切りにするとまるでヘビのブツ切りみたいです。
 
 側線に沿って小さな鱗が並んでるんだけど、意外に強固で口当たり悪いので
見た目重視でない調理法ならば削ぎ落としておくのがいいでしょうね。
 
 見るからに美しい白身
 
 せっかく鮮度のいいまま苦労して持ち帰ったんだから、まずは刺身で饗しみたのだが
ンまイッ(><)
一瞬味が鯛っぽいんだけど、見ての通り筋肉が木目細かいので歯ざわりは各段に心地良い。
どんなに噛んでも生臭さは無縁。それどころか噛む度に上品な甘味と旨味が自己主張してくる。
ヤバいよ。
白身魚でこれだけ旨味のあるのは素晴らしいですよ奥さん!
煮付(腸・卵巣付)・酒蒸柚子餡がけ
 煮付けは身が締まりすぎちゃってイマイチ勿体無い感のある味になってしまった。
不味くはないんだけどね、勿体無い。
卵巣と胃腸も煮てみたが、胃は出来そこないのイカみたいな食感。味もイカの鰓や生殖腺みたいな味。
卵巣は
巨大寄生虫みたいになってしまい、味も特筆すべきことなし。
塩焼き・唐揚げも勿体無い感のある結果に。不味くはないんだけどインパクトがね・・・
図鑑に「刺身で美味」と書いてる理由が判った気がした。
 
 ちょっとこの失敗を踏まえて、肉質と素材の旨味を活かして蒸し物にしてみることに。
日本酒をふった切り身を昆布で挟んで蒸し、薄味の出汁に柚子皮を加えて餡にし、絡めてみた。
大・成・功!
 元から木目細かい肉質だからか、絶妙な口あたり。
魚自体の旨味も損なっておらず、爽やかな餡とあいまってうっとり。
 
はぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜
めちゃめちゃ簡単な割には割烹の味。
 
苦労して持ち帰った甲斐がありましたわ。
今度からは分割して持ち帰りますがね。

記 2002.02.16


ハッカク

 地方にいかないと食べられない魚って多いです。
漁獲量が少ないとか、売っても知名度がないから売れないとか、あまりにも痛みが早いから流通コスト高いからとか。
深海魚などにありがちな話ですね。ゲンゲとか。
ハッカクもそんな理由から地方の味覚にとどまってるんでしょう。
ハッカクってのは標準和名トクビレ。でもトクビレなんて名は図鑑でしか見たことない。
売ってるのを見かけたので買ってきました。46cm。
写真には写ってないけどヒゲだらけ。
 見るからに珍妙な魚ですが、名前の通りカラダの断面が8角形だからハッカクというように
鱗もブ厚く巨大で、刺状になってるので逆撫ですると刺さるわ刺さるわ。
腹を割き、内臓を出す時のニオイにちょっとガッカリしました。
それはゴンズイの内臓と同じニオイ。雑食の底棲魚類特有の臭さでした。
ハッキリいって臭い。生臭すぎる。
こんなのホントに刺身で食えるのか?
私の脳裏は雲行きが怪しくもなりながら、とりあえず2枚におろしてみた。
火つけたら燃えそう。
 じゃコリャァΣ(゚д゚) !!!
のすごいですよ先生っ!
めっちゃ旨そう!
っていうか、まるで脂の中に筋肉があるみたい!
鱗が厚い分、包丁が気持ちよく入り、サクサク小気味よい感触であっさり3枚におろせ、
皮もカワハギみたいに容易に一気に剥けます。
せっかくなのでいろいろ食べてみました。
刺身・味噌汁・味噌焼
刺身
  醤油につけた途端に広がる脂の輪。
  口に入れた瞬間、まるで
ミルクのような芳香が口内に広がる。
  おろしている時はあんなに生臭かったのに、そんなことは忘れさせてしまう旨さ。
  歯ざわりは弱めだけど、溶け出す脂が脳をくすぐる。
  この魚だと薬味に負けないから、薬味たっぷり乗せたどんぶりでもいいかもしれない。
煮付け
  スゴイ!
  ンまぁい!
  身離れもよいが、なんといっても味!
  脂が多いからだろうか、全身が
旬のソイの背鰭付け根の身のような旨さ!
  コクがあるのに透き通る旨味が舌全体にがぶり寄り!
  刺身もよかったけど、こっちのほうが感動した。
味噌汁
  現地では刺身と味噌汁でという話をよく聞くが、味噌汁では味も脂も抜けてしまうんではないだろうか?
  そんなことを思った私がバカでした。悪ぅございました。
  あんなに脂が多いのに、思ったほど身崩れもせず、しかも、これまた違った味わい。美味。
  頭は変に変形発達した骨が多くてプラモデルのよう。
  唇とかはゼラチンぷるぷる。
味噌焼
  もう脂が多いのはわかったので、脂を逃がさないようにホイルに乗せ、
  甘辛い味噌を塗って全体から一気に熱をかけてみた。
  脂たっぷり肉汁が溢れてきて香ばしい味噌の香りが漂ってとんでもないです。
  口の中でほぐれ、溶けていく。
  !!!!!!

記 2002.02.03


超トロアマゴ

 二度と食えそうにないもの。
単なるアマゴなら珍しくもないのですが、以前、研究用に飼育していた一部のアマゴの味は別モノでした。
40cm1500g超(通常売られてるアマゴは80〜100g)
 なんとも醜いプロポーションになってしまうアマゴ達。
飼料を飽和状態で与え続けた300余匹のアマゴは、とんでもないスピードで巨大化していきました。
こうなってしまうと水槽内の密度が高くなりすぎるので、時折何匹か間引くのですが
いつも無駄に薬殺して焼却するのも嫌なので、それを賞味してみたのでした。
 
 それがなんと予想外な肉質か!
いや、予想以上というべきか。
常に運動はさせていたので内臓は健康体っぽいのだが、筋肉は全身が見事なまでの霜降り肉。
大腸菌ゼロの水源の目の前で飼育していたのだから生臭い訳などない。
さすがに焼いても脂が逃げるだけで、旨味は正常個体には遠く及ばないが
刺身で食ったら全身大トロだった。
こんなのをバンバン捨ててたとは。
 
 そして更に、偶然わかった笑える調理法。
あまりにも脂が多いせいで、深皿に入れて電子レンジで長めに加熱すると
自ら溶け出し高温になった脂で勝手に揚がり、骨まで食べられる唐揚げになってしまう。
電子レンジに入れる前に塩をふっておくとちょうどいい。
しかも美味い。
 研究の副産物にしてはかなり珍しく美味なものでGoodでしたね。
スチールヘッドなんて蒲鉾以外に使い道全くなかったのに、同じサケ科でもここまで違うとは。
まぁ、フォアグラと同様な病巣個体だと思うとちょっとアレだが、結果よければすべて良し。
 
そういえばこいつら月に2回、2−フェノキシエタノールで麻酔かけてたんだけど・・・・
まぁ、気にしない気にしない。

記 2002.02.02


ハコフグ
 その愛らしいつぶらな瞳と四角いマヌケな容姿

ぷりちーだった故ハコフグ氏
地面に置くと、その四角さゆえにどんなに暴れてもバタつくのは鰭ばかりで動けない。
まさに、まな板の上の鯉ならぬまな板の上のハコフグ
こんなにラブリーな魚を食べるなんてできないヨ!
でもフグの仲間なのに毒はない!(表皮の粘液毒は問題ない)食べちゃえ!
 っつーことで、ある日、長年食べたかったハコフグ(約20cm)を遂に捕獲した我々は
その味の真異の程を確めるためキッチンに立った。
さようならハコフグちゃん・・・
腹部に包丁を当てる。・・・・・・ぅぐぉああああ!!!
なんたる堅さ!
とりあえず1本切れ目を入れた時点で金切鋏にチェンジ。
ザクザクと腹部のとんでもなく厚く堅い鱗の鎧を四角く切り取る
ぅおおおおおおっ!!!!!!!!
そこに現れたのは体に対して違和感があるほど大きな肝臓!
そして物凄く長く強靭な腸!(←コレは捨て)
ちょっとマテ!
これでは身なんかほとんど無いのでは?
とんでもない。ありましたよ。包丁も使わずペロリと4本剥ぎ取れました。
その身は一見して鳥のササミそっくりだが、切る時の感触がまるで違う、柔らかいのにしっかりした肉質!
 冷蔵庫を見ると偶然(?)にも金山寺味噌とネギが!
肝臓と身を荒く刻んで刻みネギと金山時味噌で和え、日本酒を切らしていたので
ひょっこり出てきた2年モノの桑の実酒を加えて更に和えてから元のハコフグ本体へ詰める。
先程切りとった腹の鎧で蓋をされたハコフグちゃんは逆さにされて焼き網の上へ。
次第にいい香りが部屋に立ちこめる。
たまに雑誌で見た通り、どうやらまわりが真っ黒に焦げてくるまで熱が通りきらないらしい。

使用後はオイシソウなバディに大変身
 さて、出来上がりを試食。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
絶句。
ぅぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!
一瞬置いて我に返り、その超絶な旨さに毛穴という毛穴から涙が溢れそうだった。
こんなに旨い魚がまだいたのか・・・
白い身の歯ざわりはしっかりしたカニ爪のようで、味は味の濃い目のフグのよう。
そこに溶けた肝の香り濃厚な味・金山寺味噌がからまってネギがアクセントになっててもう!!!
なんですかこの脊髄に何かが走るような壮絶な感動は!
こんなに魚食って感動に悶え咽び泣いたのは久々ですよ。
ハッキリ言って、ここに書くのも躊躇いましたよ。ええ。
こんなマヌケなやつら、乱獲されたらきっとすぐ激減して、いずれは絶滅しかねないよ。
でも、手間と苦労、料理法のめんどくささを考えたら獲る人もそんなにいないかも。
それで良いのだ。
冬が近くて肝がでっかかったのがよかったんだろうなぁ。
あぁ・・・・・・・・シアワセ

記 2000.11.02

 追記。
手頃な掌サイズのハコフグが釣れたので、ポピュラーな丸焼きにしてみた。
日焼けサロン
 何も味付けなしで単に焼いただけ。
浜辺なんかではそのまま焚き火にくべて、真っ黒に焼いて食べると聞くが、
なるほどこれだけ表皮が丈夫だと型崩れもなく、これがいちばん楽な調理法だ。
プリプリほくほく
 うほっ!
皮を剥くというよりは、茹で卵を割るといった感じだ。
鱗・皮はそのままに、身が縮んでいるから非常に食べ易いことこの上なし。
やはり肝も大きく、旨い。
何も味付けしてないのに、身も肝も臭みは全くなく、旨味が強く、しかしくどくなく上品。
さすがに腸はちょっとイケてないので食べないほうがいいかもな感じだが、
小骨もなく、店で出ない魚としてはやはり上位な食用魚だと納得。
しかし狙ってもなかなか釣れない困ったちゃん。

追記 2002.06.23


ホテイウオ
 東北から北海道にかけて少量漁獲されるダンゴウオ科の灰褐色の魚。
見た目は20cm前後でまるっこくてぶにょぶにょ。地方名ゴッコ
マジョリカ?
も無ければ浮き袋肋骨無い。おまけに不気味な吸盤はあるわ、骨は軟骨っぽいわ。
それでいて筋肉と無縁というようなヘナチョコ肉とブ厚いブニョブニョ皮。
腹の中を出すとほとんど卵ばかり。
っていうか、卵を取り除いたらどこ食うんやねん!って感じ
皮のゼラチン質と卵を賞味する魚ということです。
 しかし。
がなんだかちょっぴり渋いんですよ。
鍋に入れたら大変なことになりました。
べつに汁自体には何の影響も出ないんですが、分散してしまった卵は
避けようと思っても必ず御椀の中に雪崩れ込みます。なにせ、数が多すぎる。
卵は食感もイマイチ味もイマイチ、それで変な渋みアリ使えない
やっぱ皮を食べる魚らしい。
ちなみに、僅かなヘナチョコ肉は熱を通すと口溶けのよいシーチキンという感じの味。
 時々TVで「幻の魚の寿司!」とか「絶品の珍魚!」とか、そんなこと言って
ホテイウオが出てますが、べつにたいしたもんでもないです。
そのへんの地域だったら500円から1000円弱で1匹買えますよ。
 
 〜追記〜
雄も食べてみました。
雌と同様に腹の中身出したら皮ばっかです。
しかし、腹の中には巨大肝臓白子が入ってまして。
鍋にして食べてみたら肝臓も白子も結構美味い。
雄のほうが美味いんじゃん?
 だがしかし雌のほうが3〜4倍の値がついてるってのは納得がいかない。

記 2000.08.18


シロウオ
 踊り食いで有名だから知ってる人も多いかと思うが勘違いしてる人も多いはず。
普通に店で売ってるシラウオはまず殆どがシラウオであってシロウオではない
 どちらも年魚で、1年間海で生活した後、河川に遡上し産卵して命を終えるのも同じなら、
見た目も半透明(生きてる時は透明)で、大きさもほぼ同じといっていい。5cm前後。
しかも、どちらも料理法は似たようなものが存在する。
 しかし、シラウオはシラウオ科で、シロウオはハゼ科である。
全く別モノなのである。
 食感においても明らかに異なる。
シラウオは口内に入れた際、頭や鰭の棘歯が舌にザラツキっぽい感覚を与えるのだが
シロウオではそれが感じられない。非常になめらかな舌触りなのだ。
これは踊り食いでもわかるのだが、熱を通した際に更なる差となって如実に表れる。
 そして熱が通った際の身自体の味の良さ。
ハゼ科魚類は味の良いものが結構いるので古来から大衆魚として親しまれてきたが
シロウオの味も例外ではない。
 吸い物にしても、あんな華奢で小さなカラダなのに出汁に負けないしっかりした味。
そしてなにより、踊り食いでは感じることもできなかった溶けるような素晴らしい舌触り
いや、ホントに溶けるんですが。
マジで絶品です。
 まだ卵とじとかで食べたことないから食べてみたいんですが、なにせ地方に飛ばないと
食べられない上、漁期が1週間くらいに限られてるんで難しいんですよね。漁業権あるし。
偶然そんな土地に住む機会があったのは幸せだったと思います。

記 2000.08.18


クダヤガラ
 岩手にいた頃の話。
ほとんど毎日のように港歩いててね、ふと気付いたらいつもと違ってたんだよ。
よく見たら海中に真っ黒に見えるほどに何かが群れてた。
手網で難なくすくえたそれがクダヤガラ。
アカヤガラは軽く1mを超える高級魚として有名だけど、
形は似ていてもクダヤガラは15cmに満たない雑魚扱いの魚。
しかし数が・・・何万匹いるのか想像もつかない。
16畳くらいの範囲に底が見えないほどの数が群れている。
産卵のために集まったらしく、雌の腹にはイクラを小さくしたような卵がつまっていた。
普段からいるにはいた魚だけど、こんなに見たのは初めてだった。
軽くひとすくいしただけで軽く100匹以上は入る。どうしたものか。
12〜14cmくらいのがほとんどだが、いかんせん太さが7〜8mmしかない。
持ち帰って薄く胡椒を混ぜた衣をつけて天麩羅とも唐揚げともつかないものにしてみると
まあまあ不味くもないそこそこのものが出来たので、それから
腹が減ったら捕りに行ってひとすくい、揚げてバリボリ食すという日々が
1週間近く続いたがさすがに飽きました。

記 2000.01.25


ライギョ
 いわゆるカムルチーです。
大抵図鑑などには「美味」と書かれてるけど、現在の日本で食用にしている地域なんて残ってるのだろうか?
淡水魚のクセに1mを越え、台湾原産だが、現在の地元台湾では高級魚扱いらしい。
「寄生虫がいるので必ず熱を通すこと」と言われているが、ライギョにつく寄生虫の写真を見て青ざめた覚えがある。
いままで見た寄生虫のなかで最もイヤな部類に入る。2〜3mあったらまさにモンスター。
で、問題の味だけど、正確には覚えてません。なにせ10年ほど前に一度、フライで食べただけだから。
覚えてるのは、白身で臭みも小骨も無く、ナマズより遥かに旨く感じたことだけ。
やはり嫌われるのは、寄生虫と、害魚扱いされてる偏見からだと思う。

記 1999.06.08


カムチャッカコカニー

 栃木県の某施設で研究してた時に食べたもの。その名の通り、カムチャッカに生息するヒメマスの一種で、
研究用に継代飼育されている。
これでも成熟した産卵期の♂
10cmくらいで成熟してしまうので小さいが、味は今でも覚えている。
結局、養殖だからなのか、繁殖期だからなのか判らないが、肉質は口の中で溶ける感じだった。
味は・・・カガミダイを安っぽくした感じ。でも不味くはないと思う。
二度と食べる機会がないかと思うとちょっぴり残念。

記 1999.04.17