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幼児の園

(5) 意識改革へ外部の目

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園内に掲示された評価結果。保護者アンケートのグラフもある(めぐみ保育園で)

 外部の目で、施設の質を向上させる動きが加速している。

 「系列の保育園などとの連携で、保育内容の質向上が図られている」「職員の年齢構成はバランスがとれ、培ってきた技術がよく伝承されている」

 東京都武蔵村山市の社会福祉法人が経営するめぐみ保育園が昨年末に受けた第三者評価結果の中の文章だ。評価は、都から認証を受けた評価機関が行った。

 結果が出たのはこの4月。15項目の5段階評価で、上から2番目の4が4、3が11と、まずまずだったが、保護者対象のアンケートの回収率が45%と低いことを指摘された。

 吉野久園長(50)は「利用者として満足しているのか、園の状況が分からず無関心なのか見極めなければ」と考えている。

 東京都が2年前から始めた「福祉サービス第三者評価」。これまでに約1900の認可・認証保育所のうち204施設が受け、結果は東京都福祉サービス評価推進機構のホームページで公開している。

 めぐみ保育園が第三者評価を受けたきっかけは、吉野さんが2年前の4月、保育園長に就いたことだった。近くの私立幼稚園で事務長をしてきた目には、保育園のたたずまいが「安全を大事にするあまり、子供がのびのびとできていない」と映った。

 例えば、粘土遊びの時間、「トイレに行く」と手を挙げる子に、「後でみんなで行こうね」という保育士がいた。「幼稚園なら、先生1人に子供は35人もいるから『1人で行ってらっしゃい』となる場面です」と吉野園長。

 この保育園では最も多い5歳のクラスで幼児35人に対し常勤保育士が2人。その分目配りが利く。

 「保育士本人は、1人でトイレに行って事故が起きたら大変と、子供の安全を考えていた。でも子供の生きる力は育ちません」

 意識改革の必要を感じたところで始まった都の第三者評価に飛びついた。

 「今のままで、どこがいけないんですか」と反発する職員もいて、1年間かけて説得した。

 評価を受ける前には、職員自身が現状を見直す「サービス向上検討委員会」を作り、研究を重ねた。吉野園長が勤めていた幼稚園にも職員を研修に出した。

 その過程で、職員は変わった。例えば、広い園庭は、「目の届く範囲で遊ばせる」という職員の意識から、これまでほとんど活用されてこなかった。今は園庭いっぱいに走り回る子供の姿が見られる。

 「親の意見をすぐ採り入れてくれていると実感している」と、自身は別の保育所で働く女性保育士(31)。パソコン講師をする母親(33)も「外部の評価を受けるほど内容に自信を持っている、いい園なんだと感じた」と言う。

 外部評価は、先行する幼稚園を追いかける形で保育園でも進む。評価を受けることで、保育園も保護者の信頼を得つつあるようだ。(前田高敬)

 第三者評価 幼稚園は2002年度から、教職員や保護者以外の「外部評価」を受けることが努力義務になり、03年度は公立30%、私立14%で実施。保育所は、保育士養成学校で作る全国保育士養成協議会によって、02年度からこれまでに165施設が評価を受けた。これとは別に、東京都のほか、群馬県、埼玉県、北九州市、横浜市なども、保育所を含む福祉施設の評価制度を作った。

2005年6月25日  読売新聞)
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