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教育ルネサンス

「英語」は今(11)

本場以上!? 疑似留学

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インテリアも「英国留学」の雰囲気を醸し出す「ブリティッシュヒルズ」

 英国生活を疑似体験できる研修施設から世相が見える。

 荘厳な雰囲気の鉄の門をくぐると、三角屋根の民家が現れた。家々の前を小川が流れ、田園風景が広がる。年間約4万5000人が利用する英語研修施設「ブリティッシュヒルズ」。専門学校の神田外語学院などを経営する佐野学園が、福島県天栄村の標高1000メートルほどの山中に英国の村を再現した。

 王や王妃の居室をイメージした部屋もある「マナーハウス」(領主の館)を中心に、民家を模した研修宿泊施設やパブが点在。クロッケーコートや庭園もある。

 マホガニーの壁にバロック調のソファ、古めかしいシャンデリアなど、建材や調度品はすべて英国製。13人の専属講師全員と、接客スタッフのほとんどが、カナダ、オーストラリアなどの英連邦出身だ。英国そのものの環境に身を置いて、英語を話す意欲を高める狙いがある。敷地は約24万平方メートル。174人が宿泊可能だ。

 開設は1994年7月。かつては、留学前の学生や海外赴任が目前に迫った会社員が、事前研修で利用することが多かった。営業マネジャーの佐藤正幸さんは2001年9月11日、世界貿易センタービルが崩れ落ちるのをテレビで見ながら「日本人が外国に行かなくなる。これで、ここもおしまいだ」と思った。

 ところが、実際には、海外での語学研修や修学旅行を計画していた学校が、次々と目的地をブリティッシュヒルズに替えた。今では利用者の7割が私立高校生を中心とする学生だ。

 6日間にわたって、早朝から夕食後まで、リスニングや発音、スピーチの授業――という厳しい日程を組む学校もある。ただ、高校生世代に最も人気があるのは、ゲームやマフィン作りなどを盛り込んだ2泊3日のコースだという。

 会社単位で参加する社会人は真剣そのものだ。第一製薬(本社・東京)の7人のグループは、本社での毎週2時間、3か月に及んだ研修の総仕上げ。二泊3日で、日中は2人のカナダ人講師の指導で英語のディベートに挑戦。夜は、パブで講師やスタッフを交えてパーティーを開く。グラス片手に会話を弾ませるための話題作りの方法やマナーを学ぶ。

 7人の参加者は、ITや株式など、今後海外との交渉が増えそうな部門から、上司の推薦などで選ばれたという。法務部の名富潤さん(38)は「英国調の家具やネイティブのスタッフに囲まれていると、英語を話したい気持ちになります。少々、文法などが間違っていても、会話できることが分かり、自信になりました」と研修の成果を語る。

 継続的に研修に利用する学校や企業に加え、研修で訪れた人が、「英語で会話したい」とプライベートでやってくる例も少なくないのだという。

 【“合宿で英語”様々】

 ネイティブの講師と合宿し、「英語漬け」の環境で学ぶ英会話学校のプログラムも様々だ。ジオス・スタディ・ツアーズ(本社・東京)は、ホテルや自社の保養所を会場に8コースを開設。ほかにも、1泊から4週間まで期間を選べる合宿専門の学校、世界各国の旅行者が滞在する「ゲストハウス」に泊まって授業を受けたり、英語でスキーなどを習ったり、というプログラムを持つ学校がある。

(2005年2月17日  読売新聞)

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