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姚明 新生への苦しみ

 米プロバスケットボール協会(NBA)、ロケッツの姚明(ヤオミン)に対するディフェンス方法は、決まりきったものでよかった。姚明が左に動けば、自分は右に。あるいは逆。ゴール下で少し動けばよかった。当時のジェフ・バンガンディ・コーチは、2メートル26のセンターに圧倒的得点力だけを求めていた。

 だが、後任のリック・アデルマン・コーチは、外側でプレーすることも要求した。「彼は信じられないシューターだ。少しバラエティーを加えない手はないだろう」と新コーチは説明する。

 8シーズン、キングズを率いてきたアデルマンの指揮で、ロケッツのゲーム哲学は大きく変わった。守備重視のバンガンディは昨季までの4季、いずれもプレーオフの最初の段階までに敗れ、解雇された。彼の戦術は姚明と攻守どちらも強いトレーシー・マグラディを中心にコート半分だけを使ったセットオフェンスだった。後任者はボールの動きを読み、それに反応するシステムを取り入れ、ポストの姚明からのパスに重きを置いた。攻撃面で常にリーグのベスト3に入っていたキングズと同じ戦術だ。ライバルチームのコーチの一人は「これぞ、リックの戦法というやつだね」と言う。

 アデルマンの戦術はすぐには、浸透しなかった。「芸術のようなものだからね」とフォワードのシェーン・バティアは言う。「もちろん、習得は出来る。でも一生かかるかもしれない」。一番困難を伴ったのは、姚明だ。彼はゲームメーカーの役割を担い、味方の動きを予測する必要がある。

 今年の夏、ロケッツはチーム首脳を中国に派遣、姚明にアデルマン戦術の4週間特訓コースを施した。最初の段階での成果は、微妙だった。姚明は外角からのシュートがうまいことと、能力のあるパサーだと証明されたが、次第に外側でのプレーにいらだつようになった。プレシーズン試合では、昨季のシュート成功率51・6%から45・5%に落ちた。ロケッツのダリル・モレーGMは「彼はストレスを感じている。だが、彼は完全主義者。絶対にうまくいく」と確信を崩さない。

 アデルマンの戦略は弱体化しているディフェンスをオフェンスの整備で補おうというものだ。昨季、1試合平均得点97・0でリーグ17位に低迷したロケッツは、FAとなったガード、スティーブ・フランシスとすぐに再契約、ガードのマイク・ジェームズ、シュート力のあるフォワード、ルイス・スコラをトレードで獲得した。また、前コーチと対立してチームを離れたボンジ・ウェルズを呼び戻した。「この補強は明らかに、外角からの攻撃を狙ったものだ」と東カンファレンスの首脳の一人は言い切った。

 もし、姚明が様々なプレーが出来る選手になったなら、ロケッツは西カンファレンスでスパーズ、マーベリックス、サンズと十分に戦えるはずだ。

 「彼らはここ2シーズンは、おりの中の猛獣みたいだった」と言うのは、スパーズのガード、ブレント・バリー。「でも、新しい戦術で彼らが解き放たれたら、恐ろしいことになる」 (記事=クリス・マニックス)

2007年11月27日  読売新聞)
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