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環境有識者会議 温暖化対策の司令塔になれ(3月9日付・読売社説)

 「ポスト京都議定書」の枠組み作りで、日本はどうリーダーシップを発揮していくのか。その戦略を練り上げる司令塔になってもらいたい。

 福田首相が設置した有識者会議「地球温暖化問題に関する懇談会」が始動した。7月の北海道洞爺湖サミットまでに意見を集約し、サミットの議論に反映させるという。

 限られた時間の中で、官邸主導で戦略作りを進めるという首相の意向を具体化したものだろう。

 2013年以降のポスト京都の枠組み作りで、米国や中国など、温室効果ガスの主要排出国すべてが参加する案を示す――。それがサミットで議長を務める日本にとって、最大の課題である。

 これまで、産業を育成・保護する立場の経済産業省と、温室効果ガスの排出規制を強めたい環境省の対立が、政策決定を遅らせる大きな要因となってきた。

 有識者会議には、省益にとらわれずに、実効性のある排出削減策を示す役割が求められる。

 福田首相はポスト京都で、発電などの分野ごとに削減可能量を積み上げて、各国が削減目標を決める方式を提唱している。

 産業界には、国別の数値目標設定に、反対論が根強い。会議には電力会社などの経営者もメンバーに加わっている。業界の利害を超えた議論が必要だ。

 経済成長優先の途上国も受け入れやすい枠組みについて、議論を深める必要がある。日本の省エネルギー技術を、どのように世界に広めていくのか、具体策を考えてほしい。

 国内に排出量取引制度を導入するかどうかも、主要な課題に挙がっている。

 制度が導入されれば、排出量を削減するほど、排出枠の売却で利益を得られるため、企業が排出抑制に積極的になるという利点があるとされる。

 一方で、削減努力を怠っても、排出枠の購入で目標を達成できるため、有効な排出量削減策にはならないとの指摘もある。

 取引市場の拡大を図る欧州連合(EU)に加え、米国でも、大統領選の主要候補者が、導入に積極的な姿勢を示している。

 国内でも、導入に反対していた経産省や日本経団連が制度の研究を始めた。欧米の流れに乗り遅れるとの危機感からだろう。

 排出量削減に効果があり、日本の産業界に適した制度はどのようなものなのか、十分に検討することが必要だ。

2008年3月9日01時42分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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