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医療

一病息災

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熊本学園大学教授 原田正純さん 72

(4)好奇心が元気の源

 「肺の影が胃がんの転移なら、ほとんど助からない。すぐに精密検査を」。そう催促されましたが、自覚症状がないし、忙しいので先のばしにしていました。以前から覚悟はしていたので、ひと月後のクリスマスイブ、「これで地上から消える」つもりで病院に行きました。

 すると、エックス線写真を見て主治医が首をひねる。「何の治療をしたんですか」と。肺の影が小さくなっていたんです。

 「何もしとらん。芋(いも)焼酎で消毒した」と言いましたが、不思議なことに、翌年春までに影は消えました。先日の検診でも、きれいなものでした。

 運動するわけでもなく、「不規則が規則」という生活ですが、気持ちは燃えている。好奇心が、僕の元気の源です。

 1999年に熊本学園大に招かれ、「水俣学」を始めました。命の学問というとキザだけど、大事なのは命をどう考えるか。

 新潟水俣病では胎児性患者が一人だけでした。中絶したからです。「熊本大の研究が生かされた」といわれて愕然(がくぜん)としました。障害をもって生まれることは不幸ですか。違う。障害者や弱者を生きにくくしているのは何か。そこに思いをいたさねば、命の本質は見えてきません。(おわり。次は作家、夏樹静子さんです)

 (文・ジャーナリスト東嶋和子)

2006年8月28日  読売新聞)
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