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友人の家庭事情をもらす

 60歳代女性。友人との関係で悩んでいます。

 友人の家族は重い病気にかかっています。友人はそのことを周囲にはあまり話していなかったようですが、私は打ち明けられて知っていました。そのことを、うっかり知人にしゃべってしまいました。話は回り回って、当の友人の耳にも入りました。私は事の重大さに気づき、謝りました。

 友人の返事は「話してしまったことは仕方がない。謝ってもらってもしようがない」。その後、連絡はありません。深く傷つけてしまったのだと思います。

 重大なことをしてしまったのだとわかっていますが、友人から相手にされなくなったことがとてもつらく、寂しいです。毎日後悔ばかり。こんな自分なんて、この世に存在しなくてもいいのではとさえ思ってしまいます。(東京・A子)

 人には知られたくない。でもこの人にだけは話して痛みを分かち合いたい。

 友人がもらした話の重さに気づかず、彼女を傷つけてしまったことを悔やんでいらっしゃるのですね。友人は人に知られてうわさになったことに傷つき、信頼していた友人に裏切られた思いで苦しんだわけですが、あなたもまた同じように友人を失ったつらさで傷ついていらっしゃる。あなたはもう十分に苦しんだのではないでしょうか。

 そこで次は視点を変えてみましょう。あなたが友人に与えたつらさを数字でイメージしてください。100でしょうか、1000でしょうか。もし1000のつらさを与えていたのなら、そのつらさを楽にする「いいこと」「やさしい思いやり」を、毎日少しずつ周りの誰かに分けてあげてください。そしてそれを数字でイメージするのです。

 例えば、「駅の階段でお年寄りの荷物を持ってあげたら10」なんていうように。思いやりの貯金が1000になるころ、あなたはきっと自分を許せるようになると思います。

 (海原 純子・心療内科医)

2008年3月5日  読売新聞)

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