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「東京大空襲」伝えるドラマ

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日本テレビ系「東京大空襲」で、焼夷弾の下、逃げまどう恋人同士を演じる藤原竜也と堀北真希
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TBS系「3月10日〜東京大空襲」で、空襲の惨状をカメラに収めた警官・石川を演じる仲村トオル

日テレ系・17、18日 監修に海老名さん 知らない世代に語り継ぐ

 1945年(昭和20年)3月10日未明、300機以上の米軍機が東京上空に飛来して焼夷弾(しょういだん)を大量に投下し、10万人以上の命を奪った東京大空襲。その惨劇を風化させないとの願いを込め、64年目の今月、日本テレビ系とTBS系で東京大空襲がドラマ化される。(清岡央、小林佑基)

TBS系・10日 ドキュメントとの特番 惨状撮影した警官を軸に

 日本テレビ系の2夜連続ドラマ「東京大空襲」(17、18日ともに後9・00)は、藤原竜也と堀北真希、瑛太と柴本幸が演じる2組の恋人たちを軸に、降り注ぐ焼夷弾の下を必死に逃げまどう人々の姿を克明に描く。藤原は、持病のため戦地行きの願いがかなわなかった若者を演じる。堀北と柴本はいずれも看護師、瑛太は強制連行され、軍需工場で働かされる朝鮮半島出身者の役で登場する。

 脚本を監修するのはエッセイストの海老名香葉子さんで、自らも大空襲で両親と祖母、兄弟ら家族6人を失った。当時11歳だった海老名さんは静岡県に疎開していたが、炎の中で家族とはぐれ、ただ一人生き残った兄から「前も後ろも、右も左も、上も下も、みーんな火の海だった」と空襲の恐ろしさを詳しく聞かされた。

 終戦後の45年秋、東京に戻ると、下町・本所にあった自宅とその周囲は、一面の焼け野原。家族の運命をどうしても知りたくて、下町中を歩いて生き残った人たちから空襲の模様を聞いて回った。数え切れない被災者の話を耳にするうち、直接は体験していない悲劇の情景を、つぶさに思い描けるようになったという。

 海老名さんは今、学校などに招かれて講演する機会が多いが、最近の子どもたちや親があまりにも大空襲を知らないことに驚く。広島には原爆の悲劇を学ぶための資料館があるが、東京には子どもたちが大空襲について学べる施設がない。

 「だからこそ、自分が語り継いでいかないと。大空襲をドラマにしてもらえて本当にうれしいし、少しでもお役に立ちたい」。その一心で、海老名さんは分厚い脚本に目を通した。

 一方、TBS系では10日午後9時から、ドラマとドキュメンタリーを合わせた特集「3月10日〜東京大空襲 語られなかった33枚の真実」を放送する。

 ドラマでは、大空襲の惨状をカメラに収めた唯一の人物、警視庁警官・石川光陽さんに焦点を当てる。大空襲の被害を地上からとらえた写真は、石川さんの撮ったわずか33枚しか現存しないという。報道機関も撮影を厳禁される中、石川さんが警視総監の特命を受け、現場を走り回って撮影したものだ。

 石川さんを仲村トオルが演じ、遺体を涙ながらに写す姿や、終戦後、進駐軍のフィルム提出要求を拒む姿などを描く。ドラマは、石川さんが残した日記を基に再現した。

 ドキュメンタリーでは、家族と生き別れになった空襲体験者が現場を再訪する。戦隊の先頭を飛んだ米爆撃機B29の搭乗員の取材にも成功。さらに、生存者の証言などを基に、下町の家屋密集地が炎上していく様子を再現したコンピューターグラフィックス(CG)映像も制作した。番組ナビゲーターは、筑紫哲也が担当する。

 島田喜広プロデューサーは、被災者らが昨年、国に謝罪などを求めて起こした集団訴訟を機に番組を企画したと説明。「東京大空襲は広島や沖縄(の惨劇)に比べ、テレビではあまり取り上げられていない。体験者も次々に亡くなっている中、節目にこだわらずに伝えなければと思い、制作した」と話している。

2008年3月5日  読売新聞)
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