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教育ルネサンス教師力 大学編(12)歌って踊って基礎英語写真の拡大
歌って踊る英語の授業。指切りのポーズで「promise(約束する)」。学生たちは懸命だ(東京純心女子大で)
広がる英語力の格差をどう埋めるのか。 東京純心女子大学(東京都八王子市)の「スタート英語」の授業は、活気にあふれていた。現代文化学部現代英語学科専任講師の間中和歌江さん(43)が、十数人の学生と、リズミカルな身振りで英単語の発音を大声で繰り返しているのだ。 両手を前に突き出し「リフューズ(refuse=拒む)」、指切りの形をして「プロミス(promise=約束する)」……。 1年生の相馬結さん(18)は「一番楽しい授業。踊って覚えるから、わかりやすい」と声を弾ませた。 単語だけではなく文法も、印象に残りやすい表現で説明する。「want(欲する)」には必ずto不定詞が続くことの説明には「ごめん、あたし、ingは苦手なんだ。to不定詞としか手をつながないの」。例文も、友人との会話や買い物など身近な場面を使い、5分解説・5分唱和というスピード感ある授業展開が学生を飽きさせない。 「大学でこんな授業はだめだと批判されます。でもここが最後の関門。学びそびれた学生たちに、きちんと力をつけて社会に送り出したい」と口調に熱がこもる。
◎ 入試の多様化もあって、同じ大学に進んだ学生でも、英語力には差がある。純心女子大の場合、国際的な英語能力テストTOEICで満点近い学生も、中学生レベルの学生もいる。「スタート英語」は、その差を埋めるために始まった。 間中さんは、低学力の生徒が多い「困難校」と呼ばれる高校の講師だった。大学教員になるのに必要な研究業績がなく、採用には慎重な意見も多かったが、最終的に田崎清忠学長自身が決断した。「かみ砕いてのみ込ませる。しかも楽しく。そういう教員が、これからの大学には欠かせない」と田崎学長。 「聞き流させない授業」を掲げる間中さんには、「学生と視線を合わせながら進める」「名前を覚え、授業中に指名する」「褒める」など、心がけるポイントがある。 とりわけ動機付けは重視する。「基礎ができていない」と決めつけ、初歩からやり直させるのは、学生の自尊心を傷つけ、成果に結びつかない。 だから、話の振り方には神経を使う。「家庭教師に行った時、かわいい中学生に『動詞の後ろにくっついているsって何?』と聞かれたら、三単現、三人称単数現在形のsって教えてあげようね」といった言い方をした後、意味や用法を解説する。自らが「家庭教師養成講座」と呼ぶ授業では、「家庭教師ごっこ」と称して学生たちに家庭教師役と生徒役を演じさせる。 学生にアンケートをとると、間中さんの授業は「英語って面白い」「先生と中学で会いたかった」といった評価であふれる。まだTOEICで高得点を挙げるなどの目に見える成果はないが、予習復習をする学生が少しずつ増えてきた。最後の関門の“関守”に、地道な努力の日々が続く。(松本美奈、写真も) 中学生並み英語力の学生も 独立行政法人メディア教育開発センター(千葉市)では、2004年度から、大学の新入生に学力テストを続けている。今年度は23大学、9912人を対象に実施した。その結果では、中学生レベルとされた学生が4割を超える私立大(理系)や3割を占める私立大(文系)もあった。 (2007年7月18日 読売新聞) ご意見やご感想、体験談を募集しています
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