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教育ルネサンス

奉仕とボランティア(8)

ニーズ様々 橋渡し役奮闘

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輪島市門前町で、被災した子供たちの遊び相手をするボランティア隊の高校生

 活動には「橋渡し役」が欠かせない。

 能登半島地震の被災地、石川県輪島市門前町の児童館を14日、高校生が訪れた。同県立小松高校と富山市の私立不二越工業高校の生徒たち計26人。与えられた役割は、被災した子供の遊び相手になることだった。

 この日は、子供たちを元気づけようとイベントが企画されていた。高校生は、約80人が、巨大な空気マットの上で跳びはねて遊んだり、玉入れ競争を楽しんだりするのを手伝った。

 小松高では、始業式で生徒会が呼び掛け、12人がボランティア隊を結成した。地震後にできた「輪島市災害ボランティアセンター門前」に相談すると、イベントの手伝いを打診された。「がれきやごみの撤去を考えていたが、様々なニーズがあるのだなと思った」と引率した北橋浩志教諭(46)。

 不二越工業も、ボランティア同好会の4人が新学期の活動方針を話し合った際、災害ボランティアが持ち上がった。クラスごとの参加を教員に呼びかけてもらい、14人のボランティア隊ができた。役割が決まった事情は小松高と同じだ。

 同センターで、門前地区の活動の橋渡しをする輪島青年会議所の西浦一彦・副理事長(38)は「潜在的なニーズを掘り起こし、スムーズにボランティアに割り振ることが重要」と強調する。市社会福祉協議会門前支所は、今も毎日、職員が手分けして各区長(自治会長)を訪ね、地域に必要なことを聞いてセンターに報告している。

 3年前まで東京都豊島区教育長だった区社会福祉協議会の二ノ宮富枝事務局長(58)は、都立高校の「奉仕」の橋渡しのために連日走り回っている。

 ボランティア体験をさせることは教育長時代からの念願だった。友だちともつきあえない子が目につく。近所づきあいも少ない。どうしたら多様な人との出会いの場を作れるか考えるうち、ボランティアに行き着いた。だが、多忙な教師が活動の場を見つけ、実現まで結びつけるのは難しい。そんな時に浮上したのが「奉仕」の必修化だった。すぐに都教委に「橋渡し役をやらせて」と手を挙げた。

 当初は受け入れに難色を示す福祉施設や町内会が少なくなかった。学校では「何をしたらいいのか」と教師たちが途方に暮れていた。二ノ宮さんが教師を連れて施設などを回って説明するうち、受け入れ先は少しずつ増えていった。生徒に身につけてほしいことを学校側に聞き、受け入れ先の要望も踏まえ、活動メニューを提案していった。

 地域との交流を深めたいと考える高校をすぐ近くの保育園に紹介し、園での体験活動を計画。活動時間が限定される定時制高校には町内のパトロールを薦めた。高齢者との交流で「思いやりの心」を育てたいという高校には、高齢者施設での花壇作りや掃除から始めるよう助言した。

 「いつかは自主的に活動するボランティアになってほしい。そこまで結びつけるのが橋渡し役の仕事」

 二ノ宮さんはさらに意欲を燃やしている。(赤池泰斗、松本美奈)

 41団体を橋渡し役に 東京都教委は、都立高の必修教科「奉仕」のカリキュラム作りの支援や体験活動先の開拓のため、4月から、41団体に橋渡し役の教育支援コーディネーターを委託した。各地のボランティアセンターや日本青年奉仕協会、環境、子育て、福祉分野のNPOなどで、活動後には「奉仕」を自主的な活動にするための助言もする。都立高の半数近くが派遣を要請している。

(2007年4月26日  読売新聞)

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