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教育ルネサンス

学校選択(5)

人気アップへ教委が応援

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入学希望者の多い学校は抽選になる。今春に向けた小学校の抽選会は昨年11月27日に品川区役所で行われた

 常に評価にさらされる学校を、教育委員会はどう支えるのか。

 ガラガラと音を立てて回る抽選器を保護者たちが見守っていた。昨年11月27日の東京都品川区役所。学校選択制で希望が多すぎた小学校の抽選日だ。

 出てきた玉の数字を職員が読み上げると、「当たった!」と声を上げる男性も。はずれた母親(41)は「地元の学校は人数が少なくて。2番手の希望を出してみます」と肩を落とした。

 大都市部で初めて、学校選択制を導入した品川区では昨年度から、重点支援校制度を始めた。区教委が課題校を指定して改善を指導する。指定は、学力調査や選択制の保護者動向などを参考にし、年度初めに各学校に通知する。

 昨年4月中旬、重点支援校となった6小学校、2中学校の校長が集められた。「校長に戦う姿勢が欠如している」。若月秀夫教育長(61)の厳しい言葉に、冨士見台中学校の松沢宏尚校長(55)は「成果をしっかり出さなければ、という覚悟ができた」と振り返る。指定理由は、生徒指導に課題が多いこと。今年度の入学者は58人と、2年前の半分以下になった。

 校長は5月初めまでに、課題と対策を記した改善計画を提出する。区教委が再提出させる場合もある。その後は指導主事らが各校を定期巡回し、助言もする。

 松沢校長は、朝の基礎学習や総合的な学習の時間などに全教員16人を各教室2人ずつ配し、生徒の様子に目が届くようにした。校長自身も授業を観察して生徒を注意して回った。その結果、遅刻や校則違反は次第に減少。7月には「いい学校になり、安心したよ」と教育長から電話を受けた。

 「重点支援校になったことで、教職員も生徒を厳しく指導するきっかけになった。区教委の支援は心強い」(松沢校長)

 区内では今年度、八潮南中学校の入学者がゼロになった。しかし、区教委は「学区内の団地の高齢化が主な原因。学校と保護者が一体となっていい教育がされている」と、重点支援校には指定していない。

 08年度には、地元の要望を受け、近隣の5校で小中一貫校が開校する。「様々な試みを組み合わせて教育を底上げするべきだ。選択制だけでは効果はない」と区教委は強調する。

 重点支援校は現在、選択制への影響を考慮して、積極的な公表はしていない。一部の校長には指定を不名誉ととらえる傾向もあるが、区教委は「課題克服の取り組みを保護者へのPRにするような制度として、将来的には学校側から手を挙げてほしい」と願う。

 東京の区部では23区中19区が小中いずれかの選択制を導入している。「学校の努力に任せている」という受け身の教委も多いが、品川の試みは参考になるはずだ。(小坂一悟)

 ▽品川区の区立学校数

 =小40、中18

 ▽選択制導入時期

 =小2000年度、中01年度

 ▽導入後の冨士見台中入学者

 =87→108→91→127→70→58

(2007年1月20日  読売新聞)

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