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育児だけの毎日に虚無感

 30代主婦。2歳の子どもがいます。子どもは本当にかわいいし、「産んでよかった」と思いますが、日々虚無感にさいなまれています。

 以前は会社でキャリアを積み、達成感に満ちた毎日でした。でも忙しすぎて子どもに恵まれず、退職しました。待ち望んだ子が生まれ、成長には喜びを感じています。しかしそれは子ども本人の力だと思うので、私自身の達成感はなく、人生が止まってしまっているような気になるのです。

 夫は仕事が忙しく、ほとんど育児参加しません。実家は遠く、頼れません。週1回子どもを預けて趣味の教室に通っていますが、ストレスは解消できません。

 「今日、自分は何を成し遂げたか」と自問しても「ただ生活しただけ」としか答えられません。子どもは私にとってかけがえのない存在です。でもこの虚無感をクリアできないのです。(兵庫・A子)

 かわいい子どもとの生活を夢見、離職してまで願った子育てなのに、育児に明け暮れる日々がむなしいとのお手紙を拝見して、あなたも多くの母親と同じ悩みに苦しんでいるのかと胸が痛んでなりません。子育てを懸命に頑張り、孤軍奮闘しているのに、育児を楽しめないのは母親として至らないからだと自分を責めている女性が少なくないのです。

 世の中には子どもが生まれたら、女性は育児に専念し、子どものためだけに生きるべきだという考え方がありますが、人は社会的な存在です。社会との接点を失うことなく、生きがいを求めながら家族を愛する努力が大切です。

 お子さんが小さい今すぐに仕事や社会的活動を始めるのは無理でも、近い将来の生き方を考えて準備を始めることが悩みの解決につながることでしょう。時間を捻出(ねんしゅつ)するために夫に協力を求めたり、子育てと仕事を無理なく両立できる支援を探すのは育児期だからこそできることです。子どもを愛し、自分の生き方を求めて真摯(しんし)に悩む母親の声が、安心して産み育てることのできる社会を築く力になると思います。

 (大日向 雅美・大学教授)

2006年7月20日  読売新聞)

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