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費用対効果抜群のネットの“口コミ”「レシピブログ」

 ブログなどインターネット上の書き込みが社会的影響力を増す中、それをうまくビジネスに活用する企業が注目を集めている。女性向けのポータルサイトを運営するアイランド(本社・大阪府大阪市)もその一つ。同社は消費者の発信する生活情報を、効果的に商品広告と結び付ける手法で利益を上げている。

アクセス数だけではビジネスモデルは不成立

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4500人以上のブロガーが書き込む「レシピブログ」
http://www.recipe-blog.jp/

 アイランドが運営するポータルの一つに、各種レシピ(調理法)のブログを集めた「レシピブログ」がある。月間アクセス数は2007年11月時点で、約187万ページビュー(PV)。これ自体は、それほど高い数字ではない。一般的に、この種のビジネスを黒字化するためには不十分とさえいえる。

 なぜなら現在、ネット上にはレシピのみならず、ニュースや音楽、映像など多種多様な情報があふれている。そのうち一般消費者のようなアマチュアが発信する情報は、CGM(消費者が生成するメディア。注1参照)あるいはUCC(ユーザーが作るコンテンツ。注2参照)などと呼ばれる。これらは今、各方面で多大な注目を浴びているが、それを利益に変換するのは難しい。

 例えば昨今人気の動画投稿サイトもCGMに当たるが、黒字化に成功している所はまだ少ない。月間約18億PVを稼ぐ「ニコニコ動画」でさえ、現時点ではまだ利益を出していない。それ以外のサイトはたいていが月間数百万PVにとどまっているが、この程度のアクセス数では通常広告収入に依存する彼らのビジネスモデルは成立しない。

購買への変換率が重要

 こうした中、アイランドは収支状況は公開していないものの、「今は(当社が手がけるいずれのサイトも)黒字」(代表取締役の粟飯原理咲さん)という。では月間200万PVにも満たないレシピブログが、どのようにして利益を出すことに成功したのだろうか。

 その大きな要因の一つに、サイト上の記事(レシピ)と広告を有機的に組み合せたことがある。レシピブログには07年11月時点で約4500個のブログが登録されている。自主登録に加えて元々ネット上に存在したものの中から、優れたブログをアイランドが発掘、そのブロガーに登録を要請したものだ。彼らのブログが更新されるたびに、RSSと呼ばれる仕組みによって自動的に「レシピブログ」にも送信されてくる。

 同サイトでは、こうした純粋なコンテンツ(記事)と並んで、独自スタイルの広告も掲載している。それは、各種食材や調味料などの新商品をブロガーに告知。モニター希望者を募って、彼らにメーカーから試供品を送付してもらい、それを使った料理のレシピを「レシピブログ」上に書いてもらう。同社はこれを「口コミ・プロモーション・タイアップ」と呼んでおり、レシピブログの主な収入源になっている。

 この種の取り組みは雑誌など従来型メディアでも記事広告と呼ばれ、昔から行われてきた。しかし、それとの違いを粟飯原さんは「(メーカ

ー側の目線ではなく)より身近で自分と同じ立場の人が、(商品について)どういうことを言っているかに価値がある」と語る。これとサイト読者が料理への関心が高い人に絞られていることも相まって、食材などの商品広告が購買に結び付く割合が、一般のバナー広告と比べて高くなった。このため、企業は比較的レートの高い広告を継続的に載せるようになったというわけだ。

 PVがそれほど多くなくても、黒字を生み出した理由はここにある。すなわち単なるアクセス数よりも、それをどれだけ購買に結び付けるかが、ネット媒体ではより大きな意味を持つのだ。

 もちろん記事と広告が渾然一体化することには、内容の客観性などの面で懸念もあるが、最近はネットユーザーの知識も向上しており、そのあたりは理解したうえで見ている。そう考えると、レシピブログのような手法は、極めてネット媒体に適したビジネスモデルといえる。。(KDDI総研リサーチフェロー・小林雅一/2008年1月24日発売「YOMIURI PC」2008年3月号から)

注1 Consumer Generated Mediaの略。

注2 User Created Contentsの略。

2008年3月6日  YOMIURI PC)
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