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教育ルネサンス

先生の「夏休み」(9)

魅力の研修教委も模索

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大学教授から国語の指導について勉強する教員たち。主催は市教委だが、教員団体が企画した(八王子市立みなみ野君田小学校で)

 教育委員会の研修を教員が計画する試みがある。

 八角形のランチルームで、約50人の教員がノートを取ったり、プリントに目を通したりしている。8月21日、東京都八王子市立みなみ野君田小学校で実施された国語の研修だ。

 大学教授が、童話「ごんぎつね」を題材に、どのように子供に作品を味わわせるかについて講義する内容だ。市教委主催の研修だが、講座内容や講師の選定は国語指導を研究する教員団体が企画した。

 八王子市教委は今夏、市立小・中学校や教科別の教員団体に「受けたい研修」を計画させる試みに初めて踏み切った。内容の企画や講師との折衝は教員側に委ね、市教委は費用の面倒を見るという仕組みだ。全国的には教育委員会が研修内容を決めているケースが多く、あまり例のない取り組みだという。

 「教員がやりたいと思う研修を実施することで、意欲が高まるのではないかと考えた」(朴木一史・市教委統括指導主事)という狙い通り、講座数は昨夏の75から152へと倍増した。

 テーマも、「話し上手・聞き上手を育てよう」や「特別支援教育の理解と具体的な対応方法」といった教員のニーズを反映したものや、「八王子に多い竹を生かした体験活動」といった地域性の高いものが並ぶ。全教員が最低2講座以上を受講する決まりだ。この仕組みには、教員が自宅で仕事をしたり、単に教養を高めるために文化施設を見学したりといったことを「研修」と認めない代わり、市教委が魅力的な研修を提供するという面もある。

 長期休業期間中の教員の研修は、2002年度に学校週5日制が完全実施されたのに合わせて、全国的に厳しく運用されるようになった。

 文部科学省は同年7月、「校長は職務と関係ないものを研修として承認しない」「自宅での研修は、保護者や地域住民の誤解を招かないよう、校長が研修内容を把握・確認し、必要性を判断する」など5項目を都道府県教委に通知した。

 「ルーズな運用を認めないのが目的。研修そのものは大切だという考えに変わりはない」と文科省初等中等教育企画課は説明する。

 個別・自主的な研修で、校長が判断する職専免研修の取得状況は、これ以降、減る傾向にあるようだ。

 神奈川県教委によると、県立高校の教員1人あたりの年間平均取得日数は、02年が4・3日、03年が1・7日、04年が0・7日、05年が0・4日。埼玉県の県立学校でも、1人あたり05年度は2・51日、06年度は0・89日となっている。

 ただ、こうした厳格な運用の結果、教材研究のために職専免研修を取ろうとしても認められなかった、という声もある。取得の可否の線引きは、現場では必ずしもうまくいっていない可能性がある。

 まとまった時間が取れる夏休みは、教員が資質向上を図る時期でもある。教員の意欲にどう応えていくのか、様々な工夫が欠かせない。(木田滋夫、写真も)

 職専免研修 教員は、地方公務員法で「勤務時間のすべてを職責遂行のために用いる」と定められており、授業や校務といった職務に専念する義務がある。ただ、個別の研修でも、校長の判断でこの義務を免除することができる。免除された研修を「職専免研修」と呼ぶ。教育委員会主催の研修や学校内での研修は、職務の中での研修という位置づけだ。

(2007年8月31日  読売新聞)

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