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教育ルネサンス

学校とかかわる(10)

休日に授業参観 望む父

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起業体験の授業で創作菓子の模型を作る福岡県飯塚市の小学生。企業や父親たちの学校参画が学校教育を充実させる

 読者の声からも、父親たちの奮闘ぶりがうかがえる。

 「勇気を出して参加しましょう(学校とかかわりましょう)」

 6年前、シングルファーザーとなった千葉県の男性から、父親たちへのエールが届いた。

 この男性は、離婚した年には、子供の学校の授業参観や保護者会への参加を、自身の親に頼んでいたが、やがて自ら出席するようになった。「親としてこれでいいのか」と疑問を持ったからだという。「最初は恥ずかしいばかりだった」が、学童保育所の父母会で役員を務めることになって、恥ずかしい気持ちも消えたという。

 元々、子供好きだったというこの父親は、現在、長男が通う中学校でPTAの副会長を務める。「子供たちの健全育成には父親の力も必要。参加してみれば新しい発見が必ずある。自分の子供はもちろん、周りの子供たちについても、今まで見えなかったところが見えてくるかも。それが犯罪防止にもつながるのでは」と提案もする。

 佐賀県に住む高校2年と中学3年の娘の父親からは、「自分の大切な子供が、どのような環境で、どんな先生から授業を受けているのかを見ることは当然だと思う。週末に父親参観ができないものか」との訴えがメールで届いた。

 制度上は学校5日制の下でも、土曜日を参観日にして振り替え休日を平日に作ることは可能なはずだが、「娘たちが通った小学校や中学校では、土曜参観は一度も開催されなかったと記憶する」。

 「義務教育では、家族の学校教育へのかかわりはとても大切。休日参観を、全国どこでもやってほしいと切に思っている」

 この男性は、父親参観の長所を「父親同士の情報交換にある」と見る。「教育現場では、半ば隔離されているような父親が表に出て、幅広い地域での教育・生活共同体を構築できたらと思っている」

 ただ、父親世代のサラリーマンは、企業の中で厳しい環境にあることも確かだという。「自身の会社でポジションを保つのに精いっぱいで、教育どころではないでしょう。それでも思春期で不安定な子供の成長期に、父権をもって注力する必要があると考えます」

 実は、この男性自身、多忙であまり触れ合う時間を持てない時期を経験している。娘たちが小学生の時だった。しかし、その後、勤務先が倒産。「そのお陰で子供たちと過ごした楽しい思い出は、今でも忘れることはできない。失業を勧めるわけではないが、生きていくうえで大切なものが何なのかわかった」

 締めくくりの言葉が重かった。

 一方で、「学校参観日休暇などは、子供のいる人にしか使えない。全社員の有給休暇を一律に増やす方が公平だ」と公務員からメールが届いた。「様々な子育て支援制度を使う人のフォローで、負担がどんどん増えている」という訴えだった。

 また、「親の介護などを考えると、有給休暇はあっても使えない。気安く、『有給休暇で学校参観を』と言わないでほしい」と憤慨のメールも届いた。

 こうした声が実際には多数派なのかもしれないが、一方で、父親や企業の意識は、少しずつ変わり始めてもいるようだ。(茂)

 次週からのテーマは「中国大学事情」。膨張し、その姿を大きく変えつつある中国の大学と、日本への影響を考えます。

(2007年8月4日  読売新聞)

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