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3月6日付 よみうり寸評

 <役人学三則>という本がある。法学者で東大教授だった末弘厳太郎の著。「およそ役人たらんとする者は」で始まる役人心得を三か条にまとめている◆三則といっても皮肉たっぷりに書かれた反語的な心得だ。簡略に紹介すると、その第一条は「万事、なるべく広く浅い理解に努め、狭く特殊な事に特別の興味を抱き、これに集中したりしない」◆第二条は「法規を盾に形式的理屈をいう技術を習得する」。第三条は「平素から縄張り根性を養うように努める」だ。この三則に努めれば出世疑いなしというのは多くの役人を見てきた末弘の皮肉だ◆薬害エイズ裁判の最高裁決定を聞いて、行政官の責任の重大さを改めて思う。最高裁が<行政の不作為>で官僚の刑事責任を認定したのは初めてだ◆薬害放置の責任を問われたのは元厚生省生物製剤課長。この決定に厚労省の反応は「厳しい」だったが、元課長一人だけでなく、組織全体で重く受け止めなければなるまい◆薬害エイズでは過去の薬害の教訓が生かせなかった。積極的で責任ある新役人学三則を生み出すときだ。

2008年3月6日14時15分  読売新聞)
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