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2007年5月8日

泣ける裁判官の言葉


ワニのぬいぐるみを使ったリハーサルを行う寺島淳司アナ(右)と鈴木記者

 「donna」は、5分間の番組である。そこに、読売新聞夕刊からのニュース2本と日本テレビの番組情報が入り、お天気情報までが詰め込まれる。

 「かまずによくしゃべれますね」と言われるが、かんでいると番組が終わってしまうので、必死なのだ。

 時間が短いため、ニュースの選択には気を使う。硬いニュースや複雑なニュースも伝えたいが、約1分間での紹介には限界がある。情報は伝えられても、背景や人間模様など、一番興味深い部分まではなかなか手が届かない。

 中でも困るのが、裁判関連のニュースだ。固有名詞や数字が多いので、誰が何をし、どんな刑に処せられたのか、表面をなぞるだけで1分がたってしまう。

 無味乾燥で面白くないと、裁判のニュースを扱うたびに思っていた。だから、この本を読んで、目からウロコが落ちる思いだった。

 『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)。もとは弁護士を目指していたライターの長嶺超輝さんが、裁判官の「言葉」を集めた1冊だ。

 覚せい剤取締法違反の罪に問われた被告に「今、この場で子供を抱きなさい。我が子の顔を見て、2度と覚せい剤を使わないと誓えますか」と話しかけ、法廷内に妻子を招き入れた裁判官がいる。あるいは、2人の子供を抱え、生活苦から万引きを繰り返した母親に「もうやったらあかんで。がんばりや」と話しかける裁判官もいる。

 タイトルは「爆笑」だが、「泣ける」話がずらりと並ぶ。無味乾燥どころか、「大岡越前」でも見ているようなのだ。

 長嶺さんは、裁判官の肉声を知ることで、「法という道具を使って人が人を裁くとはどういうことなのか」を考えてもらえれば、と記している。

 2年後には裁判員制度もスタートする。この本を通じて裁判について考えてみるのもいいかもしれない。

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