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鈴木美潮のどんな
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2005年9月13日

若い親を追い込まないで


放送終了後、スタッフルームで反省会をするディレクター(左)と山下美穂子アナ(中央)、鈴木記者

 郵政民営化一色に塗りつぶされた衆院選だったが、何人かの候補が掲げていた「食育」という言葉が気になった。

 食育の推進自体に文句をつける気はないし、「子供時代に愛情のこもった食事をすることが大事」「味覚が形成される時期にバランスのとれた食事をさせるべき」という意見に、異を唱えるつもりはない。若者が、パスタにペパーソースを1本かけたり、お菓子と米を一緒に食べたりしているのを見ると、大人として「これは、いかん」とも思う。

 ただ、話が「親が朝食を作らないのがいけない」「母親の愛情のこもった食事を」という方に流れていくと、ちょっと首をかしげたくなる。朝食も、愛情食も、あるにこしたことはないけれど、そこに、非行やキレやすい子供など、社会問題についての責任をかぶせるのはどうなのだろう。アジアの多くの国では、朝から外食が普通だが、キレる子供が多いかというと、そんなことはない。

 もし、私が親の立場で、仕事がきつい日も二日酔いの朝も「愛情こめた朝ご飯を作るのが義務だ」と言われたら、それこそキレてしまうだろう。

 そもそも、「食育」を唱える政治家は、ほとんどが外食だ。要職に就けば就くほど忙しく、取材をしていて、「愛情を込めた食事」を毎日作って子供と食べている、という人は見たことがない。「食育」の大切さは理解したうえで、あまり「作らねばならぬ」という方向に、若い親を追い込まないでほしいと思う。

食育 健康増進や食の安全の観点から注目され、6月には「食育基本法」も成立した。小泉首相は1月の施政方針演説で、「大人も子供も食生活の大切さを認識するよう国民運動として展開していく」と述べている。

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