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人工関節 高齢化で普及

長期使用で再手術の恐れも


変形し傷んだ膝関節の骨を切除し、人工関節に取り換える手術(東邦大医療センター大森病院で)

 膝(ひざ)や股(こ)関節などの痛みがひどく、歩けないなど、日常への支障が大きい場合に考える治療法が「人工関節」。変形し傷んだ関節の骨を手術で切除し、金属とポリエチレンなどで作られた滑らかな人工の部品に取り換える。歩く時の痛みが取れることから、近年、盛んになっている治療法だ。

 痛みの原因は、年齢と共に軟骨がすり減って起こる変形性関節症と関節リウマチなどの場合があり、女性に多い。加齢に伴う痛みには、適度な運動で、血行を改善し、筋力を補強するのが基本。痛み止めの薬や、関節への負担を軽くする装具も使う。強い痛みがあり、仕事や生活上の活動が大きく制限される場合に、手術を考える。

 手術には、骨の形を整える「骨(こつ)切り術」という方法もあるが、回復まで1か月前後ですむ人工関節が増えている。ただ、人工物なので、年月を経て、ゆがみやゆるみが生じると、痛みにつながる。転倒で壊れることもある。東邦大医療センター大森病院(東京)整形外科教授の勝呂徹さんによると、10年で5%、15年で10%程度が交換のため再手術になる。

 寿命が延びる中、活動的な人が、早く人工関節を入れると、再手術が必要になる可能性は高くなる。再手術の方が難しい。国内では、1980年代から人工関節手術が始まっており、近年、再手術が増えている。

 勝呂さんは、「年齢や症状、希望によって、治療には選択肢があります。十分な説明を受けて、自分に合う治療法を選んでください」と言う。そして、人工関節を入れると決めたら、「手術に伴う感染対策など病院としての安全管理システムの維持という面でも、経験豊富な施設が望ましい」と指摘する。取り付けの位置、角度が適正かどうかで、重心が変わり、手術後の活動や、耐久性にも影響を与えるだけに、習熟した医師に任せたい。

 本覧には、2006年の人工関節手術の件数90件以上を都道府県社会保険事務局に届け出た医療機関、各地域版には50件以上を掲載している。

 人工関節には、正座ができるくらい深く曲げられる膝関節など曲がる角度や大きさが異なる様々な製品がある。盛んに開発される新製品は、工夫されているが、長く使用した場合の性能などわかっていない点もある。

 膝か股関節かいずれかを得意にする場合や、入院日数やリハビリの方法も、病院により異なる。手術で痛みは取れるが、その関節を動かす筋肉がこわばっていたり、弱っていたりしていては、関節の動かせる範囲も狭くなり、十分に歩行できないこともある。このため、病院によっては、手術前からリハビリに取り組んでいる。

 また、人工物には細菌が集まり、感染症を起こしやすい。日本骨・関節感染症学会が2004年に行われた人工関節手術9882件を調査したところ、1・36%で感染症があった。ひどい時は手術のやり直しが必要になる場合もある。そうした危険があることも理解しておきたい。

 昭和大病院(東京)整形外科教授の宮岡英世さんは「しっかりした施設は、患者を長期的にフォローしてくれます。病院の経験や姿勢を知るうえで、15〜20年程度経過した患者がどのぐらいいるか、などと聞いてみても、参考になるかも知れません」と話す。(高橋圭史)

主な病院の人工関節治療実績
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2008年3月2日  読売新聞)
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