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新銀行東京 もはや「撤退」するしかない(2月26日付・読売社説)

 石原・東京都知事は「進むも地獄、引くも地獄」と語っている。もう店じまいすべきだ。

 都が1000億円を出資して設立した新銀行東京が経営難に陥り、都は、400億円を追加出資する議案を都議会に提出した。

 本紙は計画段階から、「様々な疑問」があるとして強く批判してきた。懸念した通りの展開となってしまった。

 今週から都議会の審議が始まる。1000億円の出資を認めた責任を自覚して議論する必要がある。

 新銀行東京は、石原知事が2期目の公約の目玉として推進した。開業から間もなく3年になる。長引くデフレ不況の下で、金融機関の「貸し渋り」や「貸しはがし」に苦しんでいる中小零細企業を救うために、と理念は高かった。

 しかし、当初から赤字が膨らみ、昨年9月の中間決算では累積赤字が936億円に達した。銀行側は「債務不履行が想定以上に発生し、不良債権の処理費用が膨らんだ」と説明する。

 十分な審査能力やリスク管理の仕組みがなく、「無担保・第三者保証不要」という事業モデルが傷を広げた。開業時点では景気も上向き、大手行なども中小企業向け融資に力を入れ始めていた。

 「破綻(はたん)リスクの高い企業の駆け込み寺になった」という指摘もある。最初から返済の意思がない、詐欺まがいの借り手も多かったのではないか。

 石原知事は「リスク認識の甘い旧経営陣の事業運営」が原因と発言したが、責任転嫁としか言いようがない。

 銀行側は、400億円の追加出資を受けるにあたり、2008年度から4年間の再建計画を発表した。人員を450人から120人に、店舗は6店から1店に減らすなど、事業の大幅縮小による延命策だ。他行との連携も視野に入れる。11年度の単年度黒字を目指すという。

 いずれも説得力に欠ける。黒字化計画は、常に机上の空論で終わってきた経緯がある。昨年来、金融機関に出資要請や売却を打診したが、すべて断られた。連携先が見つかるとは思えない。

 石原知事は、債務超過で破綻したら多額の資金が必要になると言う。だが、根拠となるデータを示していない。

 体調を崩して退任した、銀行出身の2代目の代表執行役の後任には、都の局長を充てた。民間はカネも人も出さず、支えているのは都だけという状況だ。

 競争が激しく、高度な専門性も要求される金融業務に自治体が乗り出したこと自体、無理があった。これ以上の負担とリスクを抱え込むことに、多くの都民の理解は得られまい。

2008年2月26日02時17分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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