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万能細胞を臨床応用、山中・京大教授が研究拠点構想

 さまざまな細胞に変化できる新型万能細胞(iPS細胞)を作製した山中伸弥・京都大教授は26日、政府の総合科学技術会議の作業部会で、大阪大と共同でiPS細胞の早期の臨床応用を目指す研究拠点構想を明らかにした。

 同会議も京大を中心とした拠点整備の支援を打ち出しており、実現すれば、基礎研究の枠を超え、臨床応用を含めた広範な研究が同時進行する体制が整うことになる。

 新たな拠点は、「iPS細胞研究統合推進拠点」。世界に対抗するオールジャパンの核として期待される。

 iPS細胞の研究拠点には、1月に創設された山中教授をセンター長とする京大iPS細胞研究センターがあるが、iPS細胞をどう作るかなど基礎研究が中心だ。これまで日本では基礎研究の成果を臨床に結びつけたり、知的財産を確保したりする仕組みが脆弱(ぜいじゃく)で、日本発のiPS細胞研究が臨床段階で海外に追い抜かれる懸念があった。

 新たな拠点は、基礎研究の成果を迅速に臨床現場で治療に応用することを目指すもので、筋肉から作った細胞シートで重い心臓病の治療に成功した大阪大の澤芳樹教授ら実際に病気の治療に当たる臨床医などを取り込み、再生医療の実現を図る狙いがある。

 拠点では、重症心不全のほかパーキンソン病など現在治療が難しい病気を対象とし、具体的な病気の治療技術の開発のほか、臨床応用に向けた安全性の確保や評価の方法、移植したい細胞を効率よく作り出す方法などの研究を推進する。

 また、治療法を開発する研究で派生する知的財産の管理・運営、先端研究の倫理問題などを検討するため、法律や生命倫理などの専門家も参加する。

 山中教授は「一日も早く臨床応用にたどり着くには、現在のiPS細胞研究センターだけでは難しい。iPS細胞に関連するすべての研究を包括的に実施したい」と話している。

 同会議の作業部会はこの日、山中教授を中心としたオールジャパンの研究体制を早期に構築するため、派生した関連特許を一括管理する体制を整備するなどの方策をまとめた。

2008年2月27日03時04分  読売新聞)
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