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教育ルネサンス

学校 統廃合(15)

急速再編 21小学校休校

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築6年の新しい教室で、「お店やさんごっこ」の練習をする1年生(右)とは教科書を音読する2年生(1月28日、古頃小学校で)

 十数年で小学校を30校減らす自治体がある。

 児童数5人。教職員は校長と担任2人。広島県庄原市の古頃(こごろ)小学校は1875年(明治8年)創立だ。児童数は1959年度以降100人を切り、30年ほど前から10人前後の状態が続いてきた。

 校舎は新しい。旧比和(ひわ)町が約2億7000万円かけて2002年に新築した。音楽室、家庭科室、コンピューター室もあり、壁や床に木材をふんだんに使った。

 学区内は約50世帯。沢づたいの市道沿い約7キロに民家が点在するため、5人は住民が相乗りで利用するタクシーで通学し、朝は7時20分ごろ学校に着く。始業前は一緒に遊べる貴重な時間になる。

 3年生1人と4年生2人で一つのクラス。社会と理科は週2回、非常勤講師が来校するため、3、4年に分かれて授業をする。1人でも休めば、理科の実験などはできない。1、2年生は1人ずつ。担任の大田明美教諭(52)が、「『お店やさんごっこ』の練習をしましょう」と1年生に紙で作ったお金を手渡した。

 古頃小を含む旧比和町の小学校は、4校中3校が今年度末で休校になり、新年度から全員が比和小に通う。4校合わせても児童は約70人だが、市教委は、子供たちが環境になじめるよう、2年前から合同の授業を開いてきた。最終回となる2月5日に、1年生は物の売り買いの疑似体験をしながらコミュニケーションを図る。

 現在の庄原市は2005年、1市6町が合併して出来た。東西約54キロ、南北約41キロと広大だが、人口は約4万3000人。旧7市町で1995年に49あった小学校は、7校が廃校、12校が休校となった。さらに今春には9校、来春には2校が休校になる見込みだ。

 旧比和町だけが、合併前に学校再編計画を持たなかった。「大字ごとに小学校があり、そもそも小規模でもなくす考えがなかった」という声もある。校舎建設に住民が寄付を出し合うなど、地域とのつながりが深かった。

 「住民の多くが『さみしいが、これだけ子供が少ないと休校は仕方ない』と言っている。小さな学校なりの良さもあるが、たくさんの友達と学べる環境づくりも大事だ」と古頃小の佐々木亮(まこと)校長(50)。

 ただ、小規模校の急速な再編で、小学校の休校数は今年4月の時点で21にもなる。すでに集会所は地区ごとに整備されている上、ほとんどが市街地から遠く利用価値の低い場所に建っているため、転用策の結論は簡単には出ない。

 「学校は小さくても大事に守り抜こうという住民の思いがあった。ただその結果、各市町とも、戦後間もなく建てた校舎を、約20年前に一斉に建て替えており、その後処理が新市に引き継がれた形だ」(市教委教育総務課)

 子供たちの環境の変化とともに、かつての自治体のツケが残る。(高橋敦人、写真も)

 休校の事情 休校は本来、児童生徒数が回復する見込みがある場合に、一時的に教職員を配置しない措置だ。補助金適正化法では原則的に、耐用年数を過ぎていない校舎を廃校にする場合、公的施設に転用しなければ、建設時に国から交付された補助金を返還しなければならない。このため、事実上廃校状態でも、転用策が決まるまで休校にしている自治体がある。

(2008年2月2日  読売新聞)

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