Web 2.0ってなんだ?
ポイントは「参加」と「貢献」
「Web 2.0」ということばが、最近あちこちで聞かれるようになった。とはいえ、「Web 2.0って何ですか?」と聞かれて、明確に答えられる人はまだ少ないのではないだろうか。筆者も、最初は何のことだかさっぱりわからなかった。「2.0」と言っているが、具体的に何らかのシステムのバージョンを指すワケではなく、IEEEやらISOなどの規格というワケでもない。
Web 2.0は、米国のティム・オライリー氏が提唱した理念である。はっきりとした定義があるわけではないが、インターネットれい明期の「壁新聞」的な一方通行のサービスではなく、WindowsなどのOSと同じように、コミュニケーションプラットフォームとして動作する現代のWebのことを総称する理念である、らしい。
要は、一昔前に比べてWebが格段に便利になり、あたかもバージョンアップしたかのごとくなので、総称して「Web 2.0」と呼ばれているようである。
さて、ここでは複雑なWeb 2.0の技術論や定義論は置いておくが、ユーザーサイドから見ると、Web 2.0は「ユーザー参加型」や「貢献型」というのがポイントになっているように思う。今流行のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やブログはユーザー参加型の典型だし、ショッピングサイト「Amazon」のカスタマーレビューなどは、「貢献型」の代表的な例と言えるだろう。また、昨今は匿名でのネット生活が行いにくくなっており、実名でのID登録などが主流となってきている。仮名や匿名が淘汰されつつあることも、Web 2.0時代の特徴と言えるかもしれない。
暴力団に殺される!? 小中学生を
ビビらせたチェーンメールとは
さて、このような「Web 2.0化現象」はますます加速する傾向にあるのだが、アンダーグラウンドの世界でも、同じような傾向が見受けられている。そこで今回は、ダークサイドのWeb 2.0化について紹介していこう。
数か月前に、一部の小中学生を恐怖のどん底に陥れたチェーンメールをご存じだろうか。全文を引用するのは控えるが、大体次のような内容だった。
あるところに仲のよい新婚夫婦がいた。ある日、奥さんが風邪をひいてしまう。旦那さんは奥さんのためにオムライスを作ろうと卵を買いに行くが、何時間経っても帰宅しない。やがて警察から奥さんに電話があり、「ご主人がなくなられた」という。「通り魔にガソリンをかけられて焼死した」というのだ。奥さんは悲しむが、いつまで経っても警察は犯人を捕まえられない。そこで奥さんは暴力団「山口組」(原文ママ)に1億円で犯人殺害を依頼。この電子メールを回さないと、犯人と認定されて組員が殺しに行く…。
…というような内容である。なお、文面は「わたし(奥さん)」の一人称でつづられている。
こうやって要約してみると、実に陳腐なチェーンメールに思える。しかし、オリジナル版にはそれなりに臨場感のあることばが使われており、筆者の周囲の小中学生は過剰に反応していた。
さて、全国のちびっ子を震わせたこのチェーンメールには、なかなかおもしろい特徴があった。従来のチェーンメールは荒唐無稽な内容のものが多かったのだが、このチェーンメールは(少なくとも子どもをだますには十分の)、現実味のある調味料で味付けされていたのである。前提となる「焼死」や「1億円の依頼料」というのは少々現実離れしているが、「奥さんの風邪」「オムライスの卵」などなど、あちこちにリアルな単語がちりばめられている。また、ここが従来とは大きく異なる点なのだが、メール本文の末尾には、連絡先の住所、電話番号、メールアドレスなども署名されていたのである。
もちろんこれまでも、きちんと署名されたチェーンメールは幾つか存在した。だが、このチェーンメールほどの迫力は感じられなかった。圧倒的なリアル感を演出しているのが、「山口組」という実在の広域暴力団の名称を臆面もなく使うセンスだろう。
ちなみに、署名されている電話番号に電話してみると、クルマ関係の業者にたどり着く。もちろん電子メールの内容とは何の関係もない業者である。すべてが架空ではなく、実在する住所や電話番号を記載しているという点が、このチェーンメールにある種の威厳を与えているように思う。これぞWeb 2.0時代のチェーンメールと言えるのではないだろうか。
小説も真っ青のどんでん返し
Web 2.0時代の巧妙スパム
スパムも負けてはいない。近年は長文でストーリー性のあるスパムが流行しているが、最近はさらに理解を超えた展開を見せるものが登場している。
最近のスパムでおもしろかったのは、「8年前から想っていたけれど、そのとき自分は人妻、ようやく最近離婚したので、今度こそ付き合ってほしい」という内容のスパムだ。筆者は「メモリアルスパム」と名づけたのだが、「今でも同じ下田パレス501に住んでいます」と言われても、一体何のことだかわからない。実はこのスパムは「連続モノ」になっており、2回目に「先日は宛先をまちがえてました。ごめんなさい」という内容の文面が届き、3回目に「せっかくの機会なのでよかったらお友達に…」と続く。突っ込みどころは満載なのだが、新たな切り口のスパムであり、なかなか楽しませてもらった。
さらにおもしろかったのは、「今日は電気の日」という紹介から始まるスパムだ。実は、3月25日をほんとうに「電気の日」と言うらしいのだが、そのスパムでは冒頭に電気の日に関する簡単な説明が入っている。一体何の案内メールかと思ったら、次に「電気を使うより身体を使いませんか?」と続き、「どのデートがお好み?」というアンケートが入って、最終的には出会い系サイトへ誘導するようになっている。このスパムなどは、教養メールとアンケートメールが合体し、さらに内容も過激すぎず、かなり「巧妙度」が高いと言える。絶対に専門のライターが背後に存在しているはずだ。
ライターの存在を感じさせるという意味では、ある女性事務員が「あなた様に女性をご紹介」するという内容の連続スパムもおもしろかった。女性事務員が毎日何人かの女性を紹介してくれるのだが、同じパターンの文面が何日か繰り返されたあと、何とその女性事務員当人が「個人的にあなたに興味が出てきました」と切り出してくるのである。さえない女の子なのに、メガネを外したら超絶美人でした…というような、少女漫画的なご都合主義なのだが、筆者も含めた世のおじさんたちは、この手の展開に弱い。もちろん筆者は、スパム上のURLをクリックしたりはしないけれど、背後にいるライターの実力を計りながら、「Web 2.0時代のスパムだねぇ君は…」と、一人つぶやくのである。
NETWORKWORLD7月号(2006年5月18日発売)掲載
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