鬼嫁日記、59番目のプロポーズ…
ブログ書籍化の流れをどう見る
最近、個人で始めたブログが書籍化される例が増えている。例えば、会社員「カズマ」氏が夫婦生活をおもしろおかしく記録したブログ「実録鬼嫁日記」は、アメーバブックスより書籍化され、さらにドラマ化されて大人気を呼んだ。またmixiでも、バリバリのキャリアウーマンの女性が、オタク青年との恋愛を日記でつづってmixi内で大反響を呼び、「59番目のプロポーズ」として書籍化・ドラマ化された。ちなみに「59番目のプロポーズ」は、来年には映画が封切られるそうである。書籍・ドラマ・漫画・映画化を完全制覇した「電車男」の例もあるが、これらは「掲示板やブログなどのコンテンツは金になる」ことを示す顕著な例と言える。
ただし、これらは非常にまれな例であることも忘れてはならない。ブログや掲示板の内容がどこかのメディア関係者の目に留まり、それが書籍化され、ドラマ化され…などという幸運に恵まれるのは、ごくひと握りのラッキーなサイト運営者だけだ。それが最近では、最初から書籍化をねらってブログを運営する人が少なくないようである。夢見る気持ちはわからないでもないが、筆者にはとても現実的な目標とは思えない。代表例の電車男にしても、書籍化されたのはほとんど「偶然の産物」とでも言うべきで、「ねらって」できるものではない。中には自費で書籍を発行する人もいるようだが、これなどは「もうける」どころか、数十万円規模の「持ち出し」になってしまうことが多いようである。
あなたも月収100万円?
アフィリエイトの実態とは
Web関係で「もうける」と言えば、最も人気があり安定しているのが「アフィリエイト(成功報酬型)」広告だ。アフィリエイトシステムでは、Webサイトの内容にマッチした広告が、自動的にアフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)から配信されることが多い。また、広告のデザインもテキスト主体など、ブログの雰囲気を壊さないよう配慮されていたりする。このように、現在はWebサイトにマッチしたアフィリエイト広告で、スマートに収入を得る時代であるようだ。
ところで、このアフィリエイトは、もともと「サイト運営者がお小遣い程度のお金を稼ぐ」というスタンスが一般的だった。人気サイトの運営者ともなれば、日々のこまめな更新や独自の情報収集、見せ方のくふうなど、さまざまな手間が必要になってくる。そのような手間や費用に対する「ささやかな見返り」という要素が、アフィリエイトにはあったのである。
ところが最近では、「アフィリエイトで稼ぐためのWebサイト作成術」がもてはやされているようだ。実際、インターネットで「アフィリエイト」という単語を検索してみると、「アフィリエイトでもうける!」「あなたも月収100万円」など、何やら怪しい文言が幾つも並んでいる。これらはすべて、「アフィリエイトでもうける方法」を指南しているWebサイトである。「Webサイトに広告を設置してお小遣いを稼ぐ」という流れではなく、最初からお金もうけをねらおうというわけだ。
この手の「お金もうけ系サイト」の中には、アフィリエイトのクリックを誘うだけでなく、情報そのものを販売しているWebサイトも多い。ユーザーが銀行に入金したら、PDFやWordファイルを添付した電子メールが届けられるというシステムが主流だ。ファイルの内容は、ダイエットや恋愛系、アフィリエイトのノウハウなどさまざまである。その価格も、9,800円から1万9,800円くらいと決して安くはなく、同時に数万円程度の有料メールマガジンを発行しているWebサイトも多い。
このように「アフィリエイト」とは名ばかりで、実際はさまざまな情報を切り売りするというWebサイトが最近は増えているようである。「アフィリエイト」というあいまいな外来語の影に隠れ、金もうけのための金もうけをプロデュースしているのが、この手のアフィリエイト系サイトの実態であると言えそうだ。
アフィリエイトが遠因?
2ちゃんねる系ブログ閉鎖事件
最近、筆者の友人がとんでもない事件に巻き込まれてしまった。「2ちゃんねる転載型ブログ閉鎖事件」に巻き込まれたのだ。ご存じの方もいるかもしれないが、ざっと事件の背景をおさらいしておこう。
2ちゃんねるはある意味ネタの宝庫であり、豊富な話題の中から秀逸なものをピックアップすれば、それだけでかなりおもしろいWebサイトができあがる。これがいわゆる「2ちゃんねる転載型ブログ」というやつだ。この手のブログの中には1日数万のPVを稼ぐものもあり、そのブログに張られているアフィリエイト収入も相当なものになっていた。
そんな中、あるPC誌に転載系ブログの管理者のインタビューが掲載された。どうやらその内容が、2ちゃんねるの住人たちを刺激してしまったらしい。「自分たちの書いた情報をアフェリエイト収入源にするとは何事だ」と、2ちゃんねるの住人がいっせいに猛反発したのである。その後、有名ブログの管理人たちはつるし上げにあい、プライベート情報が掲示板に掲載されたり、住人たちによって管理者の職場や自宅を監視されたりするなどして、ついには刑事事件にまで発展する泥仕合になった。結果的に、これら「2ちゃんねる転載型ブログ」のほとんどは、Webサイトを休止したり、アフィリエイトを外したりすることになってしまった。
前述の筆者の友人は、2ちゃんねる転載型ブログにかかわりのあった会社に、事務所を貸していた過去があった。それが2ちゃんねるの住人たちに突き止められ、どうやら「管理者の一味である」と決め付けられてしまったらしい。実際にはアフィリエイトやブログの運営とはまったく無関係であったにもかかわらず、彼の氏名や事務所の住所、自宅住所から子供の顔写真まで、さまざまな情報が2ちゃんねるに公開され、挙句の果てには事務所の階段に居座る不審者まで登場したそうだ。
もっとも、当の友人は意外に冷静で、警察署に告発したり民事訴訟に動いたりして、大過はなかったようだ。それにしても、群集心理の恐ろしさを示すひどい事件である。余談だが、2ちゃんねるの書き込みを告発する場合、IDさえわかれば本人特定条件を満たすらしい。
ともあれ、今回の騒動の火種は、転載系ブログの存在そのものではなく、転載することによって発生する利益への憎悪ではないだろうか。何しろ、インターネットの中で発生するトラブルのほとんどは、恋愛関係か金銭関係と言われている。「アフィリエイト」という気軽な収入源がクローズアップされている影で、このようなトラブルも多発していることは、肝に銘じたほうがよいかもしれない。今回の事件も、アフィリエイトにまつわるトラブルの、ほんの氷山の一角にすぎないのだから。
NETWORKWORLD10月号(2006年8月18日発売)掲載
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