巨大化し続けるGoogle
対抗馬はYahoo!とMSNか
今や検索エンジンの代名詞ともなりつつあるGoogle。日本ではなぜかYahoo!のページビューのほうが高く、Googleはやや苦戦しているが、世界的に見れば検索ポータルはGoogleの一人勝ちと言ってもよい状態だ。
しかも最近のGoogleは、単なるキーワード検索にとどまらないさまざまなサービスを展開している。英語圏のみのサービスまで含めると、その多様さには驚くばかりだ。ざっとあげるだけでも、最新ニュースをまとめてチェックできる「Googleニュース」、PC上のデータを検索できる「Googleデスクトップ」、カタログ検索の「Google Catalogs」、乗り換え案内の「Google Transit」、タクシー検索の「Google Ride Finder」、月の地図を検索できる「Google Moon」から火星の地図を検索できる「Google Mars」まで、数えだしたらそれこそキリがない。
またGoogleは、Webサービスの分野にも進出している。2GBもの容量を使える「Gmail」、特定個人やグループと予定を共有できるオンラインカレンダー「Google Calendar」、ナイキと共同で開設したサッカーファン向けのソーシャルネットワークサービス「Joga.com」など、こちらのサービスも着々と拡大中だ。さらに、Googleとサン・マイクロシステムズは、2005年から戦略的提携を進めており、「OpenSolaris」や、オフィススイート「OpenOffice.org」の普及・強化に関しても、両社が協力していくことが確認されている。これにより、ひょっとしたら近い将来、表計算ツールなどの無料のオフィスソフトウェアがGoogleから提供される可能性も出てきた。
さて、このように事業を拡大し続けるGoogleだが、Googleの一人勝ち状態を食い止めようと真っ向から勝負しているのが、Yahoo!とMSNである。
Yahoo!は検索エンジンのInktomi(インクトゥミ)やOverture(オーバーチュア)を買収、さらに2004年2月には、自社の検索エンジンを
Googleから独自開発の「YST(Yahoo Search Technology)」に変更し、Googleとの対決姿勢を鮮明に打ち出した。一方、マイクロソフトは、2005年2月に自社開発した検索エンジン「MSN Search」の正式版を発表。Windows&Officeの好調なソフトウェア路線に加え、Googleと同じ土俵でも争おうとしている。両社が独自の検索エンジンを開発したのは、いずれもGoogleへの従属を嫌ってのことだろう。
ただし現在のところ、細かい点では勝るものの、総合力ではまだまだGoogleにおよばないのが現状である。
新サービスを次々に出せる
Googleの資金力の秘密
Googleが次々に充実したサービスを打ち出せる背景の一つとして、「豊富な資金力」をあげることができる。そして彼らの資金力の根源は、広告収入によるところが大きい。特にGoogleの広告収入拡大に貢献しているのが、「Googleアドセンス」というユーザー向けの広告プログラムだ。Webサイトの運営者がGoogleアドセンスを申し込めば、そのWebサイトの内容に最適な広告が自動的にGoogleから配信される。もしもそのWebサイトを訪れた人が広告をクリックすれば、その数に応じてサイト運営者に報酬がもたらされる仕組みだ。サイト運営者がアドセンスで稼ぐには、自分のWebサイトに多くの人が集まるよう、マメに更新したり見せ方をくふうしたりなどの努力が求められることになる。つまりアドセンス広告は、広告主(企業)と掲載先(サイト運営者)の双方にとってメリットが大きいわけで、Googleの広告収入が飛躍的に拡大しているのもうなずける話である。
では、そんなGoogleに死角はないのだろうか。あらを探すわけではないが、ここからはあえてGoogleの問題点を考えてみたい。
突然Googleでヒットしなくなる?
「Google八分」問題とは
前述のように、アドセンス広告はクリック数に対して支払われるため、サイト運営者による「自作自演クリック」は厳重に禁止されている。同様に、同じIPアドレスやエージェントから連続でクリックを行うことも禁止項目だ。友達や知り合いによる「クリック数稼ぎ」と判断されるからだ。このような詐欺行為が発覚した場合、Goo gleから契約破棄を申し渡されることになる。
ここで問題となりそうなのは、契約破棄の通知が、何の前触れもなく突然送られてくることだ。しかも、解除の通知はビジネスライクにメール1通だけで行われており、基本的には理由の問い合わせにも応じてもらえない。
もちろん、詐欺行為を働くようなユーザーに同情の余地はない。だが中には、何ら問題となるような行為を行っていないにもかかわらず、契約解除が申し渡されることがあるという。実は、人気サイトをねたむユーザーが、手作業で連続クリックを行ったり、連続クリックを行うプログラムを仕掛けたりすることがあるというのだ。このような悪意あるクリックのことを、「アドセンス狩り」と呼ぶらしい。
「Google八分」という問題も話題となっている。Goo gle八分とは、本来ならGoogle検索の上位にヒットするはずの人気サイトが、上位にヒットしないようGoogleから操作されることを言う。
特に有名なのが、「悪徳商法マニアックス」というWebサイトの例だ。同サイトは、悪徳商法の手口や対策などを分類、収集する老舗サイトで、昔から高い人気を誇ってきた。それがどういうわけか、同サイトがある日突然Googleでヒットしなくなったのである。管理者がGoogleに問い合わせたところ、「日本の法律上、違法情報に該当すると判断され(中略)、削除させていただきました」と回答されたという。筆者もその文面を読んだが、悪徳商法マニアックスに一体何の問題があったのか、さっぱり理解できなかった。余談になるが、Google八分については、専用の「Google Ban Checker」というチェックツールがフリーで出回っている。なかなかよくできたツールなので、自分のWebサイトがGoogle八分にあっていないかどうか知りたい読者は、ぜひ一度試してほしい。
ともあれ、アドセンス広告やGoogle八分に見られる突然の「切り捨て」には、筆者も疑問を呈さざるをえない。また、そのようにユーザーに対して毅然としている一方で、中国版Googleにおいては中国政府の検閲を受け入れるなど、驚くような腰の低さを示したりもしている。
思えば、Yahoo! Japanには孫正義氏、マイクロソフトにはビル・ゲイツ氏という「顔」が存在する。楽天市場やかつてのライブドアも同様であろう。しかしGoogleには、彼らのように世間的な知名度を誇る「カリスマ」が存在しない。そのことも、Googleの存在を不気味に見せる要因ではないだろうか。どちらにしても、Web上ではほとんど「神」の領域を目指しているのではないかと思われるGoogleだからこそ、不公平感のある裁量は極力避け、オープンな姿勢を貫いてほしいものだ。
NETWORKWORLD8月号(2006年6月18日発売)掲載
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