ついに2ちゃんねるのPVを
超えたmixi
ネット調査サイト「Alexa」で、日本国内のページビュー(PV)ランキングをチェックしていたら、おもしろい現象を発見した。なんと先月号で紹介した「mixi」のPVが、2ちゃんねるを抜いてしまったのである(表1)。6月の半ばごろにチェックしたときには、まだ2ちゃんねるのほうが上位にランクされていたので、mixiの伸び率のスゴさを再確認してしまった。
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表1● Alexaによる日本国内のPVランキング(2005年7月21日付) |
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…と、冒頭からPVの話をしておいて何なのだが、近年はネット利用行動を計るための指標が、PVではなく「視聴時間」になりつつあることをご存じだろうか。ブロードバンドの普及により、ダイヤルアップ時代では考えられなかった「定額制&使い放題」の環境が実現したからだ。「日経ネットナビ」の2005年7月11日付のコラムでは、インターネット視聴時間に関する記事が掲載されているので、興味のある方は参照してほしい。
株、オークション、ゲーム…
長時間視聴を招くWebサイト
ネットの視聴時間が多くなればなるほど、「ブロードバンド中毒度」が高いと言える。PVも大切だが、視聴時間が長いほどWebサイトに「常駐」している確率が高いからだ。
前述の日経ネットナビによると、視聴時間が比較的長いWebサイトとして、今年は「愛知万博公式Webサイト」があげられている。万博を訪れる人が、事前に情報を収集しているのが原因のようである。
日興コーディアル証券やマネックス証券など、証券会社のWebサイトも視聴時間が長めだ。近年は、数十秒〜数分という超短期単位の売買を繰り返す「デイトレーディング」を行う投資家が増えているため、視聴時間が長いのも当然かもしれない。ちなみにこれら証券会社のWebサイトは、PVのベスト100にも入っていない。一度接続したユーザーは、ほとんどページを移動せずに、じりじりと株価の変化をチェックしているというわけだ。
同じように金銭がからむWebサイトとして、日本中央競馬会やYahoo! JAPANもあげられる。中央競馬会のWebサイトを訪れるユーザーは、各レースのオッズの変動をチェックしたり、過去のデータを見たりするため、視聴時間が長くなるようだ。Yahoo!の場合は、オークションや掲示板の存在が大きい。特にオークションでは終了間際の数分が勝負のかぎと言われているので、スナイピングをねらう人々の視聴時間が長くなる傾向にある。
視聴時間の長さで言えば、インターネットゲームも見逃すことはできない。特にRPGのように主人公のレベルをあげるタイプのゲームでは、視聴時間がそのままレベルの差となって現われるため、どうしても長時間の視聴となるようだ。
まるでアスベスト?
ブロードバンド中毒のわな
ここまで、視聴時間の長い代表的なWebサイトを紹介してきた。しかし、「ブロードバンド中毒かどうか」という視点で見た場合、株取引やオークション、馬券の売買に集うユーザーは、「中毒」という要素は少ないように思う。彼らにとってメインなのは株やショッピングや競馬であり、そのための手段としてWebサイトが存在しているに過ぎないからだ。
問題となってきそうなのは「ゲーム中毒」だ。最近では前述のRPGだけでなく、カードゲームなどのシンプルなゲームにも多数の人々が常駐している。ゲームと同時に簡単なチャットなどもできるため、平日の昼間でもものすごい数のユーザーがログインしているようだ。
試しに筆者も対戦型オセロで遠隔地に住む主婦の方と対戦してみたが、5戦5敗という戦績だった。ほかのゲームも幾つか試してみたが、皆さん強い強い。常駐ユーザーがいかに多いかを痛感したしだいである。しかし、ゲーム中毒は確かに問題ではあるが、ゲームの害に関してはブロードバンド以前から問題視されてきたわけで、これも「ブロードバンド中毒」と呼ぶには値しないように思われる。
では、ここ最近で、筆者が最も「ヤバい」と感じているWebサイトを紹介しよう。それが前述のmixiと「ふみコミュニティ」である。どちらも人間関係を深めることを目的とするコミュニティサイトだが、実はこれらにブロードバンド中毒の潜在的な問題がありそうなのだ。
ちなみにふみコミュニティとは、少女向けの情報ポータルサイトのことである。mixiに18歳以上の年齢制限があるのに対し、ふみコミュニティのほうは女子中高生あたりがメインユーザーのようだ。ふみコミュニティを知らない人は、一度Webサイトを訪れてみることをお勧めする。「チャットひろば」「プリクラひろば」などのコンテンツがあり、中高年のおじさんには(恥ずかしくて)とても正視できない。また、同サイトでは「ふみコミラジオ」というネットラジオが聴けるのだが、「恋バナ」(恋愛相談)や「告り場」(告白話の紹介)など、「いかにも」という番組が並んでいる。mixi中毒に関しては先月紹介したとおりだが、ふみコミュニティもかなりの中毒者を出しているようだ。
実は筆者は、高校の恩師を交えたメーリングリスト(ML)の管理を行っている。最近、このMLに恩師が気になる投稿をされた。「PCは確かに便利で言うことない。だがもしかしたら、アスベストのように、何十年も経ってから、目に見える形で“病気”が表面化するのかもしれない」というような内容だった。リアルな人間関係が希薄になり、メールやチャットなどの仮想空間でのお付き合いが人間関係を構築している。そんな社会に恩師は違和感を覚えられたようだ。
実際に、ふみコミュニティやmixiのような仮想空間が、現実社会に何らかのダメージを与え始めた例も少なくない。筆者の周りでは、「ブロードバンド中毒」が離婚の遠因となったケースがある。自宅に帰ってもパートナーと会話をしたくないと思う人々がインターネットに逃げるようで、倦怠期の憂うつ感を加速させてしまっているようだ。もちろん、ブロードバンド中毒がすべての原因というわけではないが、ブロードバンドさえなければ離婚に至らずに済んだかもしれない。
それを考え合わせると、70歳を超える恩師の分析は、それなりにポイントを突いているように思われる。インターネットにどっぷり依存し、ブロードバンドがあたりまえとなったわれわれは、知らない間に致命的な「ネット習慣病」に感染しているのかもしれないのだ。
NETWORKWORLD 10月号(2005年8月18日発売)掲載
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