経営&IT | 総合ITメディア | ITアーキテクト | ネットワーク&通信 | Windows実践

NetworkWorldOnLine
GO
最新号のご案内 アンケート&広告資料請求 カンファレンス
週刊メールマガジンお申し込み
詳細はこちら
NETWORK NEWS
TECHNOLOGY
BEGINNER
INFORMATION&SERVICE PR

TOP > IP電話 >

米国のIT業界最前線を独占レポート

カンタンVoIPを実現する
新プロトコル

IP電話の未来を変える新技術

2005年5月24日更新
アナログ式電話が今も広く利用されている理由は、安価なものでも電話機さえ購入すれば、あとはプラグを差し込むだけですぐに通話ができるからだ。だが、これがIP電話だと、話は異なってくる。大半のVoIP(Voice over IP)プロトコルは、特定の環境下では設定が難しく、新しいVoIP製品を箱から取り出してすぐに動作させるというわけにはいかないのが現状だ。今回は、そんなVoIPプロトコルの課題を解決する新しいプロトコルについて紹介しよう。
pr IT Management Innovation! 「JP1」最新バージョン登場
pr 次世代サービス実現の鍵!トータル組み込みソリューションを知る
pr 量子テレポーテーション実験を世界で初めて成功させた古澤明

安価でシームレスな通信を実現
IAXの驚くべき機能

 マーク・スペンサー氏はオープンソースPBX「Asterisk」を開発した人物である。彼は、VoIPプロトコルの複雑さは、VoIP市場の成長を阻害するのではないかと懸念するようになった。そこで同氏は、この問題を解決しようと、「IAX(Inter-Asterisk eXchange)」と呼ばれる新しいプロトコルを開発した。

 IAXプロトコルは、信号の送受信やメディアの利用に必要となる帯域幅を最小限に抑え、NAT(Network Address Translation)越えを内部からサポートすることを目的としている。NAT越えは将来的な実装が待たれている拡張機能だが、IAXを用いれば、NATファイアウォールを越える場合でも特別な設定は必要ない(図1)。

図1● IAXの動作概要。IAXはVoIP通信のために開発されたプロトコルだ。信号伝送およびメディア利用に要する帯域幅を最小化し、VoIPをファイアウォールおよびNATルータと併用する際に生じる諸問題を解決する

 IAXは、インターネットポート(Port4569)上でRTP(Real-Time Protocol)の代わりにUDP(User Datagram Protocol)を使用し、信号やメディアをやり取りする。また、IAXはファイアウォールを容易に通り抜けることができ、生じるオーバヘッドもRTPよりはるかに少ない。さらに、1メガビット当たりの通話量は、G.729圧縮コーデックを使用したときと比べて3倍となる。例えば、G.729とIAXを併用すると、帯域幅1メガビット当たりで最低でも103件の通話が可能だ。

 テキストコマンドを解釈するのではなく、バイナリオンリーのデータを使用するのがIAXの特徴である。VoIP機器にとっては、自然なコミュニケーションの方法と言えるだろう。

 IAXプロトコルのレスポンスは、未知のIPアドレスとネゴシエートすることなく、どこであろうとIAXプロトコルが発信された場所へ返される。IAXは常時ピンポン式のクエリーを発しているので、回線が突然停止したとしても、IAXデバイスは1分以内にそれを検知できる。

 すべての信号伝送は、常にデータリンク層で行われる。エンドポイントが信号伝送データなどを確認し再転送するときに使用するのと同じパス上で、デュアルトーン多周波信号が常に発信されているのである。

 IAXプロトコルでオーディオパケットを転送する場合、各パケットに付与されるヘッダはわずか4バイトで、使用する帯域もごく小さくて済む。複数の通話をする際は、IAXのトランキング機能が、幾つかのチャネルから発せられるデータを1つのパケットとしてまとめることで、各チャネルで生じるオーバヘッドを削減している。ヘッダ数だけでなくパケット数までも減らすというわけだ。これは、ワイヤレスネットワークにおいては非常に重要な特性である。

 さらには、IAXプロトコルは非常にシンプルでわかりやすいため、全IPスタックやIAXスタック、TDM(時分割多重)インタフェース、エコーキャンセレーション、発信者ID表示機能などを、ATA(Analog Terminal Adapter)に搭載することが可能になった。ATAデバイスにはEthernetポートや電話用ジャックが備えられており、あらゆるアナログ電話をIP電話に切り替えられる。IAX ATAデバイスを製作するのには、8ビットマイクロプロセッサ、4KBのRAM、そして64KBの内部フラッシュメモリがあればよい。将来的には、こうした安価なパーツを用いて、10ドルでIP電話を作ることも可能になるだろう。

IAXが実現する
IP電話の未来の姿

 現在、IAXプロトコルを拡張して、暗号化機能およびインターホン機能を搭載するための作業が進行中だ。このように、IAXプロトコルはほかのプロトコルと同じ機能を実装しているが、ベンダーにとって同プロトコルを採用するのはそれほど簡単ではない。というのも、IAXプロトコルには文書化された標準仕様がまだ存在しないからだ。もっとも、今では多くの協力者らが標準作製に取り組んでいる。なおこの取り組みには、だれでも参加できるようになっている。

 文書化された標準仕様こそ存在しないが、多数のベンダーがIAXに準拠する新製品を開発したり、既存製品にIAXサポートを付加したりしている。

 仕組みが明解で故障も少ないことから、旧来のアナログ式公衆交換電話網サービスは非常に信頼性が高い。IAX開発の背景には、VoIPをアナログ電話同様、シンプルなものにするというねらいがある。技術音痴な社員でも、安価なIP電話のプラグを差し込むだけで、すぐに通話を始められる日がもうすぐやってくるはずだ。

NetworkWorld.com (http://www.networkworld.com/

トピックス
特別企画 
新メールシステム構築法      第1回「Webメール」という解答とその課題

 会社案内 | 広告掲載について | サイトマップ | プライバシー・ポリシー | RSSについて RSSフィード
Copyright ©IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.