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ビギナーのためのネットワークの基礎講座

総復習
IPv6でインターネットが変わる!!

第1回 IPv6が必要である理由

2006年6月29日更新
知っているようで、詳しくは知らない「IPv6」。本講座ではIPv6の構造や機能などを中心に、ネットワーク管理者が理解しておくべきIPv6の仕組みを解説する。第1回は、IPv6が登場した背景を紹介しよう。

第1回 IPv6が必要である理由

第2回 IPアドレスは階層構造で集約する

第3回 わかりやすいルート集約で設定トラブルを回避

第4回 進化したIPアドレスの自動設定

第5回 セキュリティやモビリティ機能に対応

第6回 ヘッダフォーマットに変更あり

第7回 アドレスを省略して簡易な構造を示せ

第8回 IPv6の3つのアドレス

第9回 ユニキャストの3つのアドレス

第10回 ホストを識別するインターネットIDの設定

第11回 3つの特殊なユニキャストアドレス

第12回 マルチキャストの性質と到達範囲

第13回 ユニキャストやブロードキャストを送信する

第14回 グローバルユニキャストアドレスを有効活用する

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約64億人の世界人口に対して
IPアドレス約37億個では足りなくなる

 IPv4は、32ビットでアドレスを定義している。「32ビットのアドレス空間」という表現もあるが、どれだけのIPアドレスが利用できるかということをIPアドレスのビット数で表したものだ。

 32ビットのアドレス空間には、4,294,967,296個のIPアドレスがある。TCP/IPが標準化された1980年代において、これは十分な数とされていた。ただし、約43億個のIPアドレスをすべて使えるわけではない。というのも、IPv4アドレスはクラスA 〜クラスEの5つのクラスに分けられ、実際にコンピュータやルータなどのTCP/IPホストに設定できるのは、クラスA〜クラスCのIPアドレスだけだ。クラスA〜クラスCにも利用できないIPアドレス(0.0.0.0/8、127.0.0.0/8、プライベートIPアドレス)などがあり、割り当て可能なIPアドレスは全体の約86%となってしまう。つまり、最大で43億×0.86=約37億個のIPアドレスをホストに割り当てられるということだ。

 さて、現在の地球の全人口は約64億人だ。ということは、一人に1つIPアドレスを使うとした場合、まったくもって足りなくなってしまう。世界中の人々が1つずつIPアドレスを使う状況は現実的ではないが、例えばコンピュータだけでなく、カーナビといったクルマの車載器、携帯電話、PDA、家電製品、IP電話器などにIPアドレスを割り当てるサービスが開始した場合、日本や米国、中国などのIT先進国の人々が一人当たり何十個ものIPアドレスを使う状況が発生し、約37億個では足りなくなる可能性がある。こうしたことから、IPv4アドレスは2010年ごろまでには枯渇してしまうだろうと予測されている。

NATによる枯渇対策で生じる
4つの問題

 そこで、研究者の間ではIPv4アドレスの枯渇を解決する方法として、CIDRやNATを利用して、アドレスの総数そのままで何とかするという解決策が提案された。

 「CIDR(Classless Inter Domain Routing)」とは、アドレスクラスにとらわれずに柔軟にIPアドレスを割り当てるための集約技術だ。例えば300個のIPアドレスが必要で、クラスCではまかないきれず、、クラスBを割り当ててしまうとアドレスの利用効率が悪くなるという状況が発生したとする。この場合、複数の連続するクラスCアドレスを割り当てて、1つのネットワークとして利用できるようにするのがCIDRだ。

 もう1つの「NAT(Network Address Translation)」は、1つのグローバルアドレスを共有するという発想の技術である。企業内LANや家庭内LAN上のコンピュータにはプライベートIPアドレスが割り当てられており、インターネットと通信するときはNATが1つあるいは複数のグローバルIPアドレスを共有することでIPアドレスの消費を抑えている。

 現在、IPアドレスが枯渇するだろうと言われながらも大きな問題が発生していないのは、このNATによるアドレス変換の仕組みがうまくいっていることが大きな理由だろう。しかし、NATによるIPアドレス枯渇の対策は、いくつかのデメリットがある。

1.IPのエンドツーエンドモデルを壊してしまう
2.アドレス変換のステートを維持する必要がある
3.NAT非対応のアプリケーションプロトコルがある
4.アドレスが重複する

 まず2についてだが、IPはそもそも、ホストとサーバ間などのエンドーツーエンドモデルをベースに設計されている。両マシンの間にあるネットワーク機器は、基本的にルーティングするだけのものとして認識されている。しかし、NATはエンドーツーエンドの経路上にある機器がアドレス変換処理をしなければならないという問題がある。

 2については、通信は通常、双方向で行われるので、行きのパケットのアドレス変換を行うと、その戻りパケットのアドレス変換も行わなければならない。つまり、途中のネットワーク機器などはアドレス変換のステートを管理する必要があるということだ。しかし、NATのアドレス変換のステートを管理するとなると、パフォーマンスが落ちるという問題が発生するうえに、冗長構成時にNATのステートを引き継ぐためのメカニズムも必要になる。

 3は、NATが本来IPヘッダのアドレス情報を変換するための技術でることから発生する問題だ。FTPなど、一部のアプリケーションプロトコルはアプリケーションそのもののデータにアドレス情報を記述している。そのようなアプリケーションプロトコルでは、NATによるアドレス変換ができない場合がある。現在は同問題を解消する仕組みがネットワーク機器側に搭載されていることが多いが、追加の処理が必要であるため、結果的にパフォーマンス上の制限が出てしまう。

 そして最後の4は、同じプライベートアドレスを利用する組織が相互に通信する場合、アドレス重複の問題が発生する可能性があるという問題だ。

NATによる枯渇対策は
応急処置にすぎない?

 NATによるアドレス変換があるため、「IPv6は必要ない。いまのままでも問題ないだろう」という意見もある。だが、上記にあげた4つの問題点を考えると、NATはあくまでも短期的なソリューションに過ぎないことがわかる。そうした意味で、IPv6を導入してIPアドレスを増やすという根本的な対策が必要ということだ。次回はIPv6の仕組みなどについて、詳しく解説をする。

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