住宅ローンを選ぶとき、一番気がかりなのは「金利」です。住宅ローンは大きな金額の借り入れですから、少しでも低い利率で借り入れて、返済を楽にしたいものです。しかし、表面的な安さだけで、数十年にわたって返済する住宅ローンを決めてしまっていいのでしょうか。
金利と聞くと、ちょっと難しそうで敬遠しがちですが、基本を知ってしまえば、そう難しくもありません。
いずれにしても大切なのは、金利を決めている経済の仕組みや、タイプ別に住宅ローン金利の特長を学ぶこと。返済計画に多くの影響を与えるものですから、しっかり学んで、より賢く、より自分にあった住宅ローンを選択したいものです。そこでファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんに、金利動向を意識しながら住宅ローンを賢く選ぶコツを6回にわたってうかがいます。 |
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最初に私の見方をズバリお話しすると、今年は金利は上がらない、日本銀行のゼロ金利政策ゼロ金利政策
日本銀行が金融市場に豊富な資金提供を行うために、1999年2月から短期市場金利を実質ゼロ%近くまで低くしている金融政策はすくなくても1年は続くと思っています。ただし、これは金利動向を意識しなくていいということではありません。住宅ローンは契約書にハンコを押せば終わりではなく、契約したその日から42.195キロが始まるマラソンのようなもの。おそらく金利が動き出す来年、もしくはもっと近い将来に向けて、しっかりと勉強と準備をしておくのが常に大切なのです。
そういう私も今から一年前は、ゼロ金利政策は今年の9月頃に解除され、後半から金利が上がると考えていました。ところが、その大前提だった景気回復がそれほど期待できないようですし、個人には増税や社会保険料の負担増が重なります。企業収益は上がっていても、あまり収入に反映されないので個人のお金が世の中で回らない。街角の景気がよくならないというのは、GDPGDP
Gross Domestic Product(国内総生産)の略。国内で1年間に生み出された財やサービスなどの付加価値の総額。GDPの伸びが経済成長率になるの約6割が個人消費という日本にとって大きいんですね。景気が上がれば金利も上がる。これは大原則。反対に景気がよくならないなら、金利は上がらないでしょう。
だからこそ、金融機関のさまざまな住宅ローン商品をじっくり見てほしいと思います。目先の金利だけに目を奪われない、金利上昇前のはやる気持ちでローンを組まない。そういう賢い利用者が増えれば増えるほど、各銀行もサービスの利便性や戦略性をもった商品で勝負する。それが住宅ローンの今年1年だと思います。 |
運用も借り入れもそうですが、お金まわりというのは、どうしても親の背中を見てしまうということがあります。しかしお金まわりに関しては、親の世代ではうまくいった方法が、現代に即しているかというのは別問題。時代に合った借り方を考えることが大切です。
例えば、住宅金融公庫が再来年度の平成19年3月までに廃止され、新しい独立行政法人独立行政法人
行政改革の一環として、特殊法人を、民間企業と同様に独立採算制、法人税・固定資産税の納税義務を持たせたもの。平成15年6月の公庫法改正により平
成19年3月31日までに住宅金融公庫の権利、義務を引き継ぐ独立行政法人が設置されることとなったに生まれ変わります。これまでは運用でいうところの郵便貯金のようなイメージで、住宅金融公庫が信奉されていたわけですが、公庫の融資業務は徐々に縮小され、住宅ローンのメインは民間へと移る地殻変動が起こります。実際、2003年ぐらいから長期の固定金利型や低金利商品が民間から登場して、今では住宅金融公庫の優位性はほとんどなくなっていると思います。
今後、民間の動きはもっと活発になるでしょう。公庫の廃止は、ひとつの答えにみんなが群れて動くのではなく、住宅ローンを自分で選ぶ時代になったひとつの現れです。 |
住宅ローンの42.195キロを走りきるポイントは、完走するためにリスクを軽減することです。すくなくても5年先、10年先の家族のライフイベントをしっかり想定する、固定資産税や管理費・修繕積立金など住居費をトータルに考える、繰り上げ返済を有効に使い返済期間を短縮する。そういったことと同時に、金利意識を高めることもリスク軽減の重要な要素です。金利の先行きを正確に当てられないまでも、どういう方向性に進むか自分なりの尺度をもち、判断できるかということが大切。でも、それとても当たるか当たらないかは分からないんですね。ですから「分散」、つまりリスクヘッジの考え方が出てくるわけです。
今年、金利は上がらないだろうとお話しましたが、いま変動金利型や短期固定型の低金利で住宅ローンを借りている方も、その先の状況変化によっては固定金利型への借り換えを考えることが必要です。特に今のところキャンペーンの優遇金利で返済中の方は、数年後、一気に返済額が増える可能性も。その上、金利が上昇していれば、現状の返済額のイメージで考えていた家計のやりくりでは、生活ができなくなってしまうことも考えられます。 |
これから住宅ローンを組もうという方はもちろんですが、いまローンを払っている方もマラソンのまだまだ途中。しかしマラソンに給水ポイントがあるように、皆さんのローンも金利動向の節目節目で見直し、適切なメンテナンスができれば、きちっと完走(返済)ができるはずです。昔と違い、いまはそのための柔軟なサービスや、借り換えの選択がたくさんあるのですから、知らないと損です。日本の景気が踊り場から踏み出した時、どんな変化にも対応できる「金利感応力」を今のうちに身につけておきましょう。 |
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深野康彦(ふかの やすひこ)
有限会社ワイズマネジメント取締役 日本ファイナンシャルプランナーズ協会認定講師。個人の資産運用に関するコンサルティングや各メディアへマネー情報や金融データを発信している。著書に「なぜか「お金に困らない人」40の習慣」など。ラジオ「NIKKEI ファイナンシャルBOX」木曜日、「プレシャスマネーライフ」のパーソナリティーも務めている。 |
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Chapter 3:
金利に強くなろう(2)
(2/4掲載予定) |
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Chapter 4:
金利の上昇にどう対応するのか
(2/14掲載予定) |
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Chapter 5:
リスクの分散化
(2/23掲載予定) |
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Chapter 6:
まとめ
(3/4掲載予定) |
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