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  マネー  
【AERA発マネー】
 
増税に勝つマネー運用 負担増、ペイオフ時代の決め技
 (2005年1月24日号)


 年金保険料の引き上げに増税。本格的な負担増時代がやってきた。給料の伸びが期待できない中、資産を守り、増やす決め技はあるのか。(AERA編集部・大鹿靖明)

   ◇      ◇

 広瀬智也さん(32)は昨年秋、横浜市にアパート1棟を購入した。一昨年に取得した東京・茅場町の店舗、東京・練馬の飲食店とあわせて3物件を持つ「大家さん」。家賃収入は年2000万円にもなる。日商岩井を経て勤めた不動産会社で、家賃という収入を得ることに魅力を感じ、2003年6月に大家さんに転身した。

 広瀬さんの不動産投資のコツは、一言で言えば、安く仕入れること。3件とも、家主が急病で倒れるなど、売り急いでいる物件を相場より20〜30%ほど安く手に入れ、平均的な賃料で貸し出すことで高い収益力を確保している。3件の購入費用1億2000万円は銀行借り入れで賄ったが、将来の金利上昇リスクを考え、すべて固定金利で調達している。家賃収入から返済や経費を差し引いた手取り額は約800万円。日商岩井時代の1.5倍だ。

 景気が好転しても、中高年を襲うリストラの嵐は吹きやみそうにない。4月にはペイオフが全面解禁され、預金の全額保護時代は終わる。700兆円を超える国と地方の巨額債務を抱え、消費税率の引き上げなど、大増税時代の足音がひたひたと聞こえてくる。

 広瀬さんは、そんな時の自衛策に大家稼業は最適と見る。

 「負担増やハイパーインフレが到来しても、家賃という安定収益があれば対抗できるのではないか。少なくともそう考えるサラリーマンやOLが増えていて、手頃な物件を手に入れる競争がとても激しくなっています」

 「会社員大家」が人気

 広瀬さんは自身の経験をもとに不動産投資アドバイザーとして、投資セミナーを開いてもいる。

 「いまの収入だけでは不安」「会社がいつまでもつか」。そんな不安から大家さんになりたがる人が増えている。広瀬さんが開くセミナーには毎回50〜70人がつめかける。20歳〜30歳代の若い人が多いという。不動産賃貸業と農業は兼業禁止の社内規定に触れない企業が多く、会社に気兼ねなくできる点が人気を呼んでいる。

 ブームの火付け役の一人が「カリスマ大家」と呼ばれる藤山勇司さん(41)だ。マンションやアパートなど保有不動産は88戸にのぼり、平均月収は310万円。自身の体験をもとに出版した『サラリーマンでも「大家さん」になれる46の秘訣』(実業之日本社刊)は、10万部を超えるベストセラーとなった。

 藤山さんは35歳のときに、勤めていた中堅商社の大倉商事が自己破産して倒産。当時、出産直後で体調が芳しくない妻と乳飲み子を抱えていたため、「自宅にいながらできる仕事を」と考えた結果、大倉商事で培った競売不動産購入ノウハウを生かして、専業大家さんに転身した。

 相場よりも安い任意売却物件や競売物件などを買うことで、銀行からの借入金(1億数千万円)を抑えつつ、高い保有資産価値(推定時価約4億6000万円)を生み出している。広瀬さんと同じような投資手法だ。

 「サラリーマンに会社の給料以外に自立した財務基盤をもってほしい。決してエリートサラリーマンでなかった自分でも十分できたので、普通のビジネススキルのサラリーマンなら『大家さん』は十分できますよ」

 高値づかみで失敗例も

 とはいえ、2人のように成功した大家さんがいる半面、危うさもつきまとう。マンション業者のセールストークに乗って新築の投資用マンションを高値づかみして失敗する人も少なくない。

 神奈川県内に住む50歳代の男性の場合、

 「年金代わりにと思って二千数百万円で買った新築の投資用マンションだが、あてにしていたほど家賃収入がとれず、700万円で売却した」

 こんな例は枚挙にいとまがない。

 そうならないためには、

 「とにかく数多く調べないといけません。私の場合、1000件を調べ、そのうちの100件に足を運び、さらにそのうちの10件と交渉し、1件に絞り込みます」

 と、広瀬さん。逆に言えば、高値づかみして失敗した人が損を覚悟で投げ売りする物件が、新しい大家さん希望者の狙い目にもなっているのだ。

 大増税リスクを抑え込もうと、海の向こうの新興市場に目を向ける人もいる。社会人3年目のナオミさん(25)は昨年6月、会社の同僚らと3人で中国・上海の3LDKの新築マンションを約2800万円で購入した。実家から都内の大手企業に通うナオミさんは、入社以来ためてきた約300万円を頭金に出し、残金は中国の銀行のローンで工面した。物件は、中国の不動産を扱う日系企業から紹介された。

 購入したマンションのすぐそばには日本人学校があるため、今春から日本企業の駐在員むけに家具付きで貸し出す計画だ。

 「日系企業の駐在員なら安定的な家賃が期待できる。不動産ブームで上海の不動産価格はまだまだ上昇しそうで、いざとなったら売って売却益を稼ぐこともできます。それに中国元が将来、切り上げられる可能性も高いため、元建ての資産を持っていた方が有利」

 と、考えてのことだ。

 BRICsに関心

 ナオミさん同様、急成長が期待されるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)投資で資産を運用したいニーズが高まっている。とはいえ日本にいながら個人がインド株やブラジル株を直接購入するのは難しく、投資信託など各種ファンドがその受け皿になっている。大和証券が昨年夏に発売を始めた投信「ニュー・メジャー・エコノミーズ・ファンド」(ドル建て)はその代表例で、4カ国の株式をほぼ4分の1ずつ組み入れた。為替変動リスクはあるが、12月末までの5カ月間で基準価額が24%も上昇。日本株が一進一退を繰り返すのと対照的に、好成績なのが人気の的だ。日興コーディアル証券も1月からインド株の投信の販売を始める。

 ふつうは億単位の金融資産を持つ富裕層が投資するヘッジファンドにも関心が集まる。

 「ぜひ投資したいのですが……。できれば中国、インド、ロシアに分けて投資したい」

 ヘッジファンド情報を提供しているアセット・ナレッジメント社を昨春、年配の主婦が訪ねてきた。主婦の手持ちの金融資産は1000万円程度。それまで銀行預金以外は外貨預金程度しか経験したことがない、という。応対した斎藤三郎社長が為替変動を含むリスクを説明、「一度に大金を投入すべきではない」と諭したものの、結局、本人はロシア、インド、中国を対象にしたファンド・オブ・ファンズに1万ドルを投資した。

 「皆さん、運用に相当困っているようです。海外のヘッジファンドに投資したいという人が急速に増えています」

 と、斎藤社長。同社の顧客はそれまで数億〜数十億円の資産を持つ人が中心で、最低投資額は3万ドルだったが、100万円程度の小口投資家の相談にも対応するようにした。とはいえ、あまりに初歩的知識しかない人も多く、後々のトラブルを避ける上でも、面談の上、リスクをどの程度認識しているか確認した後で投資相談に応じることにしている。

 銀行でヘッジファンド

 ヘッジファンドへは銀行の店頭からも投資できるようになった。東京三菱銀行は昨年暮れから一部店舗で、三菱証券の米ドル建て投信「マン・グローバル・マルチ・ストラテジー」(最低投資額3万ドル、募集は1月21日まで)の受け付けを始めた。この投信は安定運用部分と積極運用部分とに分かれ、積極運用部分は世界でも有数のヘッジファンド、英マン・グループが担う半面、安定運用の部分で償還時の元本(ドルベース)を確保するというのが売り物。三菱証券が昨年夏にこの第1号ファンドを募集したところ、会社経営者や医師ら富裕層だけでなく、30〜40歳代の若い人にも人気だった。

 「数百万円を投資するような、ヘッジファンドの大衆化が進んでいる。以前のような高利回りは期待しにくいが、一般的な投資手法として認識されてきた」

 と、ヘッジファンド情報を提供するメイヤー・アセット・マネージメントの松本賢二郎さんは言う。この1年間で世界のヘッジファンドに流入したマネーは前年より1000億ドル超増え、1兆ドルになったと推定されている。ただ、いかがわしいファンドもあり、その見極めが重要だ。

 一獲千金を狙う積極的な資産運用とは別に、社会貢献との両立を狙う新しい資産運用スタイルも計画されている。地域に貢献する市民起業家に融資してきた「市民バンク」(片岡勝代表)が、さわかみ投信の澤上篤人社長と組んで始めるコミュニティファンドがそれにあたる。

 地域貢献ファンド構想

 地域の起業家などに投融資するコミュニティファンドが少しずつ増えているものの、そこへの資金の出し手は、おおむね理念に賛同する人たちの見返りを期待しない志に頼りがちだった。

 これに対し、市民バンクは一定のリターンが期待でき、なおかつ社会改革や地域貢献にも役立てるファンド創設を構想している。

 具体的には、各地にコミュニティファンドの受け皿となる有限責任投資組合を設け、集めたお金の2〜3割を地域のコミュニティビジネスに投融資し、残る7〜8割をさわかみ投信などで運用する。仮に地域起業家への投融資が焦げ付いても、投信運用のリターンによって、損失を少なく抑えこむ仕組みだ。

 面倒な会計や納税などの事務は、市民バンクが昨年11月に創設した「コミュニティーファンド育成ステーション」が代行し、投資組合の発起人たちは投融資先のミニ事業家を選別する「目利き役」に徹してもらうという。

 「間接金融から直接金融へ。銀行や郵便局に眠っていた預貯金が、外に流れ出す時期にきている。そのときの受け皿にコミュニティビジネスがあってもいい」

 と、澤上社長は言う。従来数千万円どまりだったコミュニティファンドに億単位の資金が入るのも夢ではない。金融機関に運用を丸投げするのではなく、

 「資金の出し手が地域に役立つ起業家など運用先を主体的に選ぶことができる。地域のニーズと資金の出し手を結びつける本来の『バンカー』がそこから生まれる」

 と、片岡さんは話す。「税」という回路を経ずに、個人の金融資産が地域の公益活動を直接支える時代が来るかもしれない。

(01/27)




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